診察室は、優しい音楽と穏やかな空気に包まれていた。目の前の女性はどこか落ち着いた表情をしていたが、何かを伝えたい気持ちが伝わってきた。質問を一通り終えた後、彼女がふと話し始めた。
「先生、昨日、すごく不思議な夢を見たんです。今もその感覚が消えなくて……」
私は彼女の言葉に耳を傾け、促した。
「どんな夢だったんですか?」
彼女は少し笑みを浮かべながら、話し始めた。
「昨日、久しぶりに昔のアルバムを見たんです。そこには、もう亡くなった祖母との写真がたくさんありました。祖母がとても優しい人で、私、彼女が大好きだったんです。小さい頃、夏休みになると毎年のように祖母の家に泊まりに行っていました。」
私は彼女の言葉に耳を傾け、その温かな思い出に触れた。
「アルバムを見た後、その夢を見たんですね?」
「そうなんです。夢の中で、私は祖母の昔の家に泊まりに行っていたんです。その家は田舎にあって、緑がいっぱいで……夏の湿った風や蝉の声が本当にリアルで、まるでその頃に戻ったような気がしました。」
彼女の目は、夢の中の景色を思い出しているように輝いていた。私はその場所の感覚を掘り下げるために、さらに質問を続けた。
「祖母の家では、どんなことをしていたんですか?」
「大したことはしていなかったんです。縁側に座って、祖母と何気ない会話をしていました。『今年は暑いね』とか、『もうすぐ花火大会があるよ』なんて、どうでもいいような話ばかり。でも、その会話が不思議なくらい心にしみて……夢の中なのに、心から安心していたんです。」
彼女はその時の感覚を思い出し、優しく微笑んだ。
「その何気ない時間が、特別だったんですね。」
「はい。現実ではもう祖母はいないんですけど、夢の中ではすごく自然に祖母と過ごしていて、悲しさなんて全く感じなくて……ただ、一緒にいることが嬉しくて。祖母も、いつも通りの優しい笑顔で私を見てくれていました。」
私はその夢が彼女にとってどれだけ意味深いものだったかを感じ取り、さらに質問した。
「その夢から覚めた時、どんな気持ちが残りましたか?」
彼女は少し考え込んでから、静かに答えた。
「すごく癒されていて、心がふわっと軽くなった感じがしました。現実に戻った瞬間も、まだその安心感が残っていて……あの夢がただの夢じゃなくて、祖母が本当に会いに来てくれたような気がしてしまうんです。」
彼女の言葉から、夢が持つ深い癒しの力を感じた。私はその感覚に寄り添いながら、話を続けた。
「その夢は、あなたにとっての癒しや安心を与える特別な体験だったのかもしれませんね。祖母との思い出が、今のあなたの心を温めてくれているのかも。」
彼女はしばらく考え込み、ゆっくりと頷いた。
「そうかもしれません。最近、仕事やプライベートで疲れていて……もしかしたら、祖母がそんな私を励ましに来てくれたのかもって思いました。あの夢のおかげで、少し前向きになれそうです。」
診察室を後にする彼女の背中を見送りながら、私はその夢が彼女にとってどれほど大切なものだったかを思い返していた。夢の中で祖母と再会し、何気ない時間を過ごす――それは、彼女が今必要としていた癒しと安心そのものだったのだろう。
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