それは、仕事からの帰り道でのことだった。今日は残業が長引いて、帰宅したのは夜11時過ぎ。疲れ果てていた私は、早くシャワーを浴びて眠りたかったが、家の前でふと嫌な予感がした。
私は鍵を開け、中に入るとインターホンの録画ランプが点滅していたのだ。
「誰か来てたのか……?」
なんとなく背中に冷たい感覚が走った。
すぐに録画履歴を確認することにした。
インターホンの画面を開き、再生ボタンを押す。
そこには、私の家を訪れた誰かが映っていた。
最初の映像は夕方6時頃。
画面には宅配業者が映っていて、特に変わった様子はない。
次の映像――これがおかしかった。
録画された時刻は、夜9時過ぎ。私はその時間、まだ会社にいた。だが――
画面に映っていたのは自分の玄関前に立つ、真っ黒な人影だった。
その影は、カメラに顔を見せないようにして玄関の前にじっと立っていた。細かい特徴は分からないが、背丈や体格は成人の男くらいに見える。影はしばらく立ち尽くした後、急にドアノブをガチャガチャと回し始めた。
私はその映像を見た瞬間、冷や汗が背中を伝った。
「……何なんだよ、これ……」
その不審な影は、ドアが開かないと分かると、しばらくカメラに向かって無言で立ち尽くしていた。そして――ゆっくりとカメラに顔を近づけた。
画面の中で、カメラに映ったのは――私自身の顔だった。
「え……?」
私は凍りついた。
そこには、間違いなく自分の顔が映っていた。だが、何かがおかしい――その顔は、目の奥が空っぽで、無表情のままこちらをじっと見つめていた。
映像の「私」は、無言のまま口をゆっくりと開き、何かを囁いていた。だが、録音されているはずの音声はまるで雑音のように途切れていて、何を言っているのかは聞き取れない。
「……どういうことだ……?」
私は画面に釘付けになりながら、再び映像を見返した。すると、最後の瞬間――「私」はカメラの方へ向かって、不気味に笑っていた。そしてその笑顔を残したまま、画面の端へゆっくりと消えていった。
「俺、こんなこと……するはずないだろ……」
自分が外出している間に、自分とそっくりの何者かが玄関前に立っていた。
私は急いで家中を見回したが、何の異変も見つからなかった。ドアも窓もきちんと閉まっている。まるで、最初から誰も来ていなかったかのように静まり返っていた。
その夜、私は不安と恐怖に苛まれ、結局一睡もできなかった。
しかし、さらに奇妙なことがあった。翌朝、再度インターホンの録画を確認しようとしたが――昨夜の映像は全て消えていた。まるで、最初から何もなかったかのように。
あの日以来、私は外出するたびに恐怖を感じるようになった。家を留守にする間、またあの「自分に似た何者か」がやってくるのではないかと――。
今でも、インターホンの録画ランプが点滅するたび、その映像に映っているのは自分なのか、それとも……別の何かなのか、考えただけで背筋が凍る。
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