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掛け軸の呪い 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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それは、私の親戚にあたる叔父の家で起きた出来事だった。叔父は古美術品が趣味で、時折、骨董市やネットオークションで珍しい品を手に入れては家に飾っていた。

ある日、叔父は「呪いの掛け軸」なんて呼ばれていた、奇妙な掛け軸を手に入れたと言って嬉しそうに見せてくれた。その掛け軸には、荒々しい筆致で、人の顔が描かれていた。その表情は不気味に歪んでおり、まるでこちらを睨みつけてくるようだった。

「気味悪いな……なんでこんなもの買ったんだよ?」

「はは、ただの噂さ。『この掛け軸を持つと呪われる』なんて言われてるけどな――信じちゃいないよ」

その時の叔父は、普段と変わらず陽気だった。私は少し嫌な気持ちがしたが、特に気にせず、その日はそのまま帰宅した。

だが、数週間後――叔父の様子が急におかしくなったという話を聞いた。

叔母が心配そうに電話で言った。
「毎日、じっとあの掛け軸を見つめてるの。話しかけても、返事をしないのよ。まるで別人みたいなの……」

私はいても立ってもいられず、叔父の家を訪れることにした。

家に着くと、玄関を開けて出迎えてくれたのは、かつての叔父とはまるで違う人間のようだった。

「……久しぶりだな」

彼の顔はどこか虚ろで、目は落ちくぼみ、声には力がなかった。だが、不自然な笑みだけが貼り付いていた。その笑顔がまるで誰かが無理やり表情を引きつらせたかのようで、私の背筋に嫌な寒気が走った。

リビングに入ると、そこには例の掛け軸が壁に掛けられていた。まるで人の魂がこもっているかのように、不気味な存在感を放っていた。

「ずっとこれを見てるのか?」

私がそう尋ねると、叔父はゆっくりと頷いた。

「……この顔、俺に話しかけてくるんだよ。最初は気のせいだと思ってた。でも、日に日に声がはっきりと聞こえるんだ……」

その声が、「お前は俺だ」と囁くのだという。

「なぁ、俺、最近おかしいか?」

そう言いながら、叔父は不自然に首をかしげて笑った。その表情が、まるで掛け軸に描かれた顔と同じだったことに、私は気づいてしまった。

「お前……本当に叔父さんか?」

私が思わずそう問いかけると、叔父はピクリと動きを止めた。そして、低い声で呟いた。

「……俺は、誰だ……?」

その言葉と共に、叔父の顔から笑みが消え、無表情でじっとこちらを見つめた。その視線は、まるで人間ではない何かのように冷たかった。

恐怖に駆られた私は、急いでその場を離れようとしたが、その時、背後から叔父の声が聞こえた。

「……俺に触るな――お前もこうなるぞ」

その声は、叔父の声ではなかった。まるで掛け軸の中の誰かが、叔父の口を借りて話しているようだった。

私は慌てて家を飛び出し、それ以来、二度と叔父の家に近づかなかった。

数日後、叔母からの電話で、叔父が急に姿を消したと聞かされた。家の中には何も手がかりがなく、ただあの掛け軸だけが黒ずんだまま壁に掛けられていたという。

その後、叔母が業者を呼んで掛け軸を処分しようとしたが――掛け軸の中の顔が、叔父の顔になっていたという話を最後に、私は彼女とも連絡を取らなくなった。

今でも、あの掛け軸のことが頭から離れない。
あれは本当にただの絵だったのだろうか――それとも、人を取り込む呪いだったのだろうか。

そして、時々私は夢の中で、あの叔父の不自然な笑顔と視線を思い出す。

もしかしたら、叔父は今もあの掛け軸の中から、誰かに話しかけているのかもしれない――「お前もこうなるぞ」と。



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