それは、ある蒸し暑い夏の夜だった。窓を開けても風はほとんどなく、部屋の中はじっとりとした空気に包まれていた。私はベッドに横になり、スマホを少しいじった後、寝る準備を整えた。
電気を消し、真っ暗な部屋で目を閉じたのを覚えている。だが、その夜、私は奇妙な体験をすることになった。
どれくらい経っただろうか――
ふと目が覚めた時、私はすぐに違和感に気がついた。
「……電気がついてる?」
確かに寝る前に電気を消したはずだったのに、部屋の天井灯が白い光を放ち、部屋全体がぼんやりと明るく照らされている。
その瞬間、私は自分の体に力が入らないことに気づいた。
「え……?」
腕も足も重く、まるで自分の体が他人のようだった。胸の上に何かが乗っているわけでもなく、押さえつけられている感覚もない。ただ、全身が力が入らず、微動だにできない状態だった。金縛り――そう理解した瞬間、全身に嫌な冷汗が滲んだ。
そして――
視界の端に、黒い影が見えた。
それは、部屋の隅、ちょうどクローゼットの前あたりにぽつんと立っていた。人の形をしているが、頭や腕、足の輪郭はぼやけていて、まるで影そのものが形を成しているようだった。
私は声を出そうとしたが、喉がこわばって何も言えない。ただ、その影から目を離すことができず、じっと見つめ続けた。
すると――その影が、ゆっくりと左右に揺れ始めた。
「……?」
その揺れは、小さな子供がリズムをとるような、不自然な揺れ方だった。最初はごくゆっくり――ほんの数センチ単位で横に動いているように見えた。
しかし、徐々にその振れ幅が大きくなっていった。
左右に揺れるたびに、影の輪郭がぼやけ、何かが不気味に変化していくように感じられた。だが、私は何もできない。声も出ず、体も動かせず、ただその異様な光景を見つめるしかなかった。
そして――
その影が、異常なスピードで左右に揺れ始めた。
実際に音は聞こえなかったが、バサッ! バサッ! と、風を切るような音が立つのではないかと思うくらい、激しく横に振れていた。その勢いで影は形を崩しながらも、不自然な存在感を放っていた。
私は恐怖で心臓が凍りつき、ただその黒い影が狂ったように左右に揺れる様子を見つめるしかなかった。
その時――
突然、全身に力が戻った。
「はっ……!」
私は反射的にガバッと起き上がった。
次の瞬間――
部屋は真っ暗だった。
さっきまでついていたはずの天井灯は消えており、クローゼットの前に立っていた黒い影も消えていた。
「……夢、だったのか?」
だが、あまりにリアルな感覚が残っていた。部屋にはさっきまでの嫌な気配が漂っているような気がして、しばらくの間、私は呼吸を整えることができなかった。
私は気になって部屋の電気のスイッチを確認したが――確かにオフになっていた。
夢だったのか――それとも、あの黒い影が見せた何かだったのか。
それ以来、あの影が再び現れ金縛りにあるのではないかと、眠るのが少し怖くなった。
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