それは、私が小学5年生で、弟が小学2年生の頃のことだった。休日の午後、家で暇を持て余していた私たちは、母に「公園に行ってくる」と言い残し、二人で近所の公園へ向かった。
その日は天気も良く、普段なら家族連れや友達で賑わっているはずの公園だったが――着いてみると、誰一人いなかった。
「今日はなんでこんなに静かなんだろう?」
私が呟くと、弟も不思議そうに辺りを見回した。
「誰もいないね……」
ブランコも滑り台も砂場も、どこもかしこも人の気配がない。まるで公園全体が取り残されてしまったような、どこか寂しい雰囲気だった。
「せっかくだから、遊ぼうよ」
私たちは、周りに誰もいない不気味さを無視することにして、遊び始めた。まずはブランコに乗り、風を切って揺れながら、お互いに競争するように漕いだ。
しかし――ある瞬間、私は急にブランコを漕ぐのをやめた。
「……おかしいな」
背中に視線を感じたのだ。まるで、誰かに見られているような、不気味な気配がする。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
弟が不思議そうに私を見た。
「……誰か、いる気がするんだ」
弟もブランコを降りて、辺りを見回した。しかし、見えるのは静まり返った遊具と、風に揺れる木々だけだった。
「……あれ?」
ふと、弟が砂場を指さした。そこに――人の足跡があったのだ。
「さっきまで、あんなのあった?」
「……ないよ、絶対に」
砂場には、大人のものとも子供のものともつかない、奇妙な足跡がぽつぽつと並んでいた。それも、途中で途切れたり、方向がおかしかったりして、普通の人が歩いたようには見えなかった。
「……もう帰ろう」
私は急に怖くなり、弟の手を引いて公園を後にすることにした。
しかし、公園の出口へ向かう途中――
誰かの足音が、背後からついてくるのを感じた。
「……誰かいるの?」
思わず振り返ったが、誰もいない。
それでも、私たちが歩き出すと、コツ…コツ…と一定のリズムで足音が続く。
「お兄ちゃん、怖い……」
弟が怯えた声を出す。
「大丈夫、大丈夫だから」
私は自分に言い聞かせるように弟を励まし、足早に出口へ向かった。
ようやく公園の外に出ると、不思議なことに足音はぴたりと止んだ。まるで公園の中に閉じ込められていた何かが、外に出るのを嫌がっているかのように。
帰り道、弟と私は黙り込んで歩いていた。家に着くと、玄関で母が迎えてくれた。
「どうだった、公園は?」
その質問に、私は答えに詰まったが、弟がすぐに言った。
「なんかね、足跡があって、足音がついてきたんだよ!」
母は笑いながら、「そんなことないでしょ」と言ったが、私たち兄弟は目を合わせて、無言で頷き合った。あれは確かに、本当に起きたことだったのだ。
「お兄ちゃん、あれってなんだったんだろうね……?」
弟が不安げに尋ねてきたが、私にも答えはなかった。
「わからない。でも、次はあの公園には行かない方がいい」
弟もコクリと頷いた。あの静まり返った公園と、不気味な足音――今でも、思い出すだけで背筋が寒くなる。
あれは一体何だったのか。公園で何かに見られていたのは、ただの気のせいだったのか――今でも、答えは見つかっていない。
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