目次
目覚めた場所
サユリは、いつもの通学路を歩いている途中で突然のめまいに襲われ、その場に倒れた。気づくと、見知らぬ場所に横たわっていた。周囲を見渡すと、どこか不気味な「無機質」さが漂う空間が広がっている。
床も壁も、どれも金属のように光沢があり冷たいが、手で触れると奇妙に柔らかい。しかも空間全体が灰色一色で、何もかもが同じ質感だ。人の気配も音もなく、時間が止まったような静寂が広がっている。
サユリは、ここが現実の世界でないことを直感的に理解した。――ここはどこか別の世界だ。
無限に続く廊下
恐怖と不安を抱きながらも、サユリは前に進むことにした。少しでも手がかりを探そうと、ただ目の前に伸びる長い廊下を歩き始める。
しかし、歩いても歩いても景色が全く変わらない。左右の壁、天井、そして足元まで、何もかもが同じパターンの繰り返しで、終わりが見えない。
「……出口はどこ?」
気づけば、足音すら自分のものかどうか分からなくなっていた。まるでこの世界が彼女の感覚を徐々に侵食しているかのようだ。
ふと、背後で「カチ…カチ…」という小さな音が聞こえた。何かが彼女の後を追っている――だが振り向いても何もいない。
異世界の存在
サユリが何時間歩いたのかも分からなくなった頃、廊下の先に異様なものが現れた。それは、扉だった。
扉は無機質な黒い金属製で、真ん中に小さな丸い窓が開いている。サユリはためらいながらもその窓を覗いた。
――その瞬間、心臓が凍りついた。
窓の向こうには、サユリ自身の姿が立っていた。まるで鏡を見ているように同じ姿、同じ表情、同じ動きをしている。しかし、そのもう一人の「サユリ」は、無表情で目に光がなかった。
そして、彼女がじっと見ていると、そのサユリが――にやりと、不自然に笑った。
世界が崩れ始める
怖くなったサユリは急いでその場を離れようとした。しかし、扉の向こうのサユリも同時にこちらを追いかけてくるように動く。さらに、どこからともなく「カチ…カチ…」という音が近づいてきた。
――この場所は出口がない。そのことにサユリは気づいてしまった。
壁が徐々に歪み始め、床が液体のようにぐにゃりと揺れる。空間全体が不安定になり、次第に崩れていく感覚に襲われた。周囲の色は灰色から真っ黒に変わり、視界がどんどん狭まっていく。
サユリは走った。崩れゆく廊下の先に、新たな扉を見つけ、それを必死に開け放つ――。
帰還?
眩しい光が彼女を包み込んだ瞬間、サユリは自分の部屋のベッドで目を覚ました。あの無機質な異世界はすべて夢だったのか――そう思いながらも、彼女は心のどこかで違和感を拭えなかった。
部屋の時計を見ると、めまいで倒れてから数時間が経過している。全てが元に戻ったように見えたが、何かが違う気がする。
ふと、サユリはベッドの横に置かれた鏡を見た。そして、その瞬間、凍りついた。
鏡の中の自分は、微かに笑っていたのだ。
そして――背後から、あの「カチ…カチ…」という音が再び聞こえてきた。
この不気味で異質な世界の体験は、サユリにとって夢なのか、それとも現実の一部だったのか――それは誰にも分からないままだ。
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