目次
深夜の金縛り
ケンタは仕事の疲れからか、その夜は早めに布団に入った。しかし、眠りについたのも束の間、金縛りが突然襲ってきた。体が重く、まったく動かない。これまでにも何度か金縛りを経験したことはあったが、今夜のそれは異様なほど強烈だった。
――息が苦しい。
何かが胸の上にのしかかっているようだ。まるで見えない手に押さえつけられている感覚。全身に冷たい汗がにじむ。
「う、うう……」
必死に体を動かそうとするが、まったく力が入らない。目を開けることさえ恐ろしく、ただ闇の中で息が詰まるような時間が過ぎていく。
静寂を破る足音
部屋は深い静寂に包まれていた――いや、そう思った瞬間、ケンタの耳に不気味な足音が響いてきた。
「……コツ……コツ……コツ……」
その足音は、廊下の奥からゆっくりとこちらに近づいてくる。明らかに人間の歩く音だが、どこか機械じみた、規則的で冷たい音だった。
「誰か……いるのか……?」
体は動かないまま、ケンタの心臓は不安と恐怖で激しく脈打つ。足音は、確実に彼の部屋に近づいている。
「コツ……コツ……」
そして――足音が、部屋のドアの前で止まった。
闇の中の何か
ケンタは必死に目を開けようとするが、まぶたが重くて開かない。誰かがドアの向こうに立っているのは確実だが、それが何なのかを確認することもできない。
――カチャッ。
ドアノブがゆっくりと回る音が響いた。そして、部屋のドアがわずかに開き、冷たい風が入り込んできた。
その瞬間、ケンタの耳元で「カサッ…」という音がした。何かが、彼の部屋の中に入ってきたのだ。
「コツ……コツ……」
足音が、ベッドの方に向かって近づいてくる。
押さえつけられる感覚
次の瞬間、ケンタは強烈な重圧を感じた。何かがベッドに乗り、彼の胸の上にのしかかってくる。重い。まるで巨大な石が胸の上に置かれたかのようだ。
「……誰だ……?」
うめき声を上げようとしても、声にならない。目を閉じたままの彼は、何かの存在が彼の顔のすぐ近くにあるのを感じた。冷たい気配が皮膚に触れ、重苦しい空気が鼻腔を満たす。
その時――耳元で息遣いが聞こえた。
「……ふぅ……ふぅ……」
何かが、彼の顔をじっと見つめている。それが何なのか、どうしても確認したいのに、体もまぶたもまったく動かない。ただ、その「存在」が自分の胸の上で重くのしかかり、呼吸ができなくなっていくのを感じるだけだった。
足音の主
突然、ケンタの足元の方からもう一つの足音が聞こえてきた。
「コツ……コツ……」
新しい足音が、今度は廊下の方から再び近づいてくる。誰かがもう一人、こちらに向かってくるようだった。
ケンタは混乱した。――さっきの足音とは別の存在がやって来る? それは助けなのか、それともさらに恐ろしい何かが迫っているのか?
「コツ……コツ……」
足音はどんどん近づき、ついに部屋の中に入ってきた。次の瞬間、ケンタの上にのしかかっていた重圧がスッと消えた。
息が戻り、体がようやく動くようになったケンタは、勢いよく目を開けた。だが、そこには何もいない。ただ、部屋の中にはかすかな足音だけが響いていた。
「コツ……コツ……」
その足音は、ケンタの耳元で一度止まり――そして、ゆっくりと部屋の外へ遠ざかっていった。
深夜の訪問者
ケンタはようやくベッドから体を起こし、部屋のドアを見つめた。ドアは少しだけ開いている。廊下の向こうには、ただ暗闇が広がっているだけだ。
「……なんだったんだ、今のは……?」
胸を撫で下ろしながらドアを閉め、再び布団に潜り込むが、彼はしばらくの間眠ることができなかった。
――それ以来、ケンタは毎晩、誰かが家の中を歩き回る足音を聞くようになった。最初は遠く、そしてだんだんと近づいてくる足音。
そして、足音がドアの前で止まる瞬間、ケンタの体は再び金縛りにあうのだった。
それが何なのか、そしていつまで続くのか、ケンタには知るすべがなかった。ただ一つだけ分かるのは、その足音の主は、まだ彼のそばにいるということだ。
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