目次
突然の金縛り
午前3時。ケイタはふと目を覚ましたが、体がまったく動かないことに気づいた。全身が何かに縛りつけられているように重く、目を開けるのが精一杯だった。
「また金縛りか……?」
彼はこれまで何度か金縛りの経験があったが、今夜のそれは明らかに異質な重さだった。特に胸の上に感じる強い圧力は、何かがそこに乗っているような感覚を覚えさせた。
息が浅くなり、体をどうにか動かそうとするが、まったく反応しない。目だけが開き、薄暗い天井が見えるだけ――その時、ケイタの耳に奇妙な音が届いた。
廊下から聞こえる足音
――コツ、コツ、コツ……
はじめは一つの足音だった。それはゆっくりと、彼の部屋の前の廊下を歩いているように聞こえる。だが、その足音は次第に増えていった。
「コツ……タタタ……ドス……」
様々なリズムの足音が混ざり合い、廊下を行ったり来たりしているのが分かる。靴を履いた重い足音、裸足のような軽い足音、そして大きな何かが這い回るような音――。
「……誰だ……?」
ケイタは布団の中で冷や汗をかき、ただその音に耳を澄ますしかなかった。まるで、複数の「何か」が、彼の部屋の前を行き来しているようだった。
足音が増えていく
時間が経つにつれ、廊下での足音はさらに混沌としていく。
「ドタドタドタ……」「タタッ、タタッ……」「ズル……ズル……」
足音は次第に騒がしくなり、何かが慌てて走り回っているような音も聞こえる。その一方で、不気味にゆっくりとした足音が混ざり合い、まるで廊下が別の場所に繋がってしまったかのような異様な雰囲気を漂わせていた。
――まるで見えない「何か」が次々に廊下を訪れ、また去っていくかのようだ。
「……頼む……行ってくれ……」
ケイタは心の中で何度も叫ぶが、体は依然として動かず、重圧だけが彼の胸を押し潰すようにのしかかる。
足音が消える瞬間
やがて、足音は少しずつ減り始めた。慌ただしく行き交っていた音は徐々に遠ざかり、廊下に静寂が戻りつつある。
――コツ……コツ……
最後の一つの足音が、彼の部屋の前でピタリと止まる。
「……誰だ?」
心臓が早鐘のように鳴る。何かが、部屋の前に立っている――そう確信した。ドアはわずかに開いているはずだが、視線を向けても何も見えない。ただ、そこに「何か」がいる気配だけが、空気を重くしていた。
そして、しばらくの沈黙の後――
――スッ……
まるで誰かが「去っていく」かのように、その最後の足音も遠ざかっていった。
金縛りが解ける
静寂が訪れた瞬間、金縛りがふっと解けた。
「……ハァッ……ハァッ……」
ケイタは一気に息を吸い込み、冷たい汗でびっしょり濡れた体を起こした。部屋の中はいつものように静かで、何の異変もないように見える。
――だが、廊下の向こうからはもう何の足音も聞こえない。
彼は恐る恐る布団から抜け出し、ドアの前まで歩いた。廊下には誰もいない。いつもと同じ、自分の家の何もない廊下がただ広がっているだけだ。
「……何だったんだ、今のは……?」
安心したのも束の間、ケイタはその場で足がすくんだ。
――廊下の奥の闇の中で、「何か」がこちらをじっと見ているような感覚を覚えたからだ。
彼は急いで部屋に戻り、ドアを閉めた。その後、何度も確認したが、それ以来、あの足音が聞こえることはなかった。
――ただ、ケイタは今も寝る前に不安を感じる。
もしまた金縛りにあったとき、あの足音たちが戻ってきたら――その時は、果たして金縛りが解けるのだろうか?
それ以来、ケイタは夜遅くになると、必ず廊下の奥を確認するようになった。そして寝るたびに、胸の中に消えない不安が広がるのだ――。
「今夜は、どんな足音が聞こえるのだろうか?」
■おすすめ
マンガ無料立ち読み
1冊115円のDMMコミックレンタル!
人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】
ロリポップ!
ムームーサーバー
新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp
新品価格 |
ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |