僕は最近、仕事のストレスもあって不眠症気味だった。夜中に目が覚めることが多く、そのたびにベッドの中でじっと天井を見つめ、眠気が戻るのを待つ。
その夜も同じように目が覚めた。スマホの時計を見ると、午前4時44分。数字の並びが不気味に感じたが、気にしないようにして目を閉じた。
だが――その瞬間、玄関のチャイムが鳴った。
「……こんな時間に?」
一瞬、夢かと疑ったが、確かに玄関のインターホンが「ピンポーン」と鳴ったのだ。
「宅配便とか、そんなわけないよな……」
深夜に訪問者が来るなんて普通じゃない。身の毛がよだつような嫌な予感がした。無視して寝たふりをしようかとも思ったが、気になって仕方がなかった。
僕は意を決して、リビングを通り抜け、玄関へと向かった。ドアスコープから外を覗いてみると――誰もいない。
「……気のせいだったのかな?」
少しホッとしながらドアから目を離そうとした、その瞬間――。
ドンドンッ!
突然、激しくドアが叩かれた。
心臓が凍りついた。ドアスコープを再び覗くと、そこには異常に背の高い人影が立っていた。暗くて顔ははっきり見えないが、じっとこちらを覗き込んでいるような気配がする。
「……誰ですか?」
勇気を振り絞って声をかけたが、返事はない。ただ、ドアの向こうで微かに誰かの呼吸音が聞こえるだけだった。
背中に冷たい汗が流れる。僕はドアの前からそっと離れ、リビングに戻ろうとした。そのとき――。
カチャリ。
玄関のドアノブがゆっくり回る音がした。
慌てて玄関に戻り、ドアノブを押さえ込んだ。鍵はかかっている。だが、外から誰かがドアを開けようとゆっくりノブを回し続けている。
「やめてくれ……頼むから……」
必死にノブを押さえつけていると、突然、ノブの動きがピタリと止まった。静寂が訪れ、僕は少しだけ安堵した。
だが――。
次の瞬間、玄関の向こうから囁き声が聞こえた。
「……見てるの、わかってるよ……」
その声は、まるで僕の耳元で囁いているかのようだった。
もう限界だ。僕はリビングに駆け戻り、スマホを手に取って警察に電話をかけようとした。だが、スマホの画面には電波が入っていない。そんなはずはない。ここは都会のど真ん中だ。
さらに、スマホの時計を確認すると――。
午前4時44分のまま、一切時刻が進んでいなかった。
「おかしい……おかしい……!」
恐怖で頭がおかしくなりそうだった。そのとき、玄関のドアがギィ……と音を立てて、少しだけ開いた。
「鍵をかけたはずだ!」
震える手で玄関に向かおうとしたが、足がすくんで動かない。開いた隙間から、黒い影がゆっくりとこちらを覗き込んでいるのが見えた。
その瞬間――部屋の電気が一斉に消えた。
暗闇の中、僕は立ち尽くした。全身が冷たく凍りつき、何も考えられない。次の瞬間、耳元で囁く声が再び響いた。
「……次は、もっと近くで見るね……」
その声とともに、僕の視界が完全に真っ暗になり、意識はそこで途切れた。
翌朝、僕は自分のベッドで目を覚ました。何事もなかったかのように、朝日が部屋を照らしている。昨夜の出来事は夢だったのか――。
しかし、スマホを確認した僕は、凍りついた。最後の通知がインターホンから届いていた。
「午前4時44分 来訪者あり」
その通知を見た瞬間、背筋が凍り、僕は今も――深夜にインターホンが鳴ることを恐れている。
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