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眠りたいのに眠れない…夢の中で不眠症に悩む恐怖体験 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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診察室には静かな音楽が流れ、患者の女性は少し疲れた表情で椅子に座っていた。彼女はためらうようにして話し始めた。

「先生、最近ちょっと変な夢を見てるんです。夢なのに、現実よりもリアルで……それがすごくしんどくて。」

私は彼女の話に耳を傾け、促した。

「どんな夢なんですか?」

彼女は深く息を吐き、夢の内容を語り始めた。

「夢の中で、私はベッドに横になってるんです。体はすごく疲れていて、まぶたも重くて、眠りたいっていう気持ちはすごくあるんです。でも、どうしても眠れないんです……何度も寝返りを打つけど、全く眠りにつけなくて。」

彼女はその時の無力感を思い出し、少し俯いた。

「その夢の中で、どんな感情が湧いてきましたか?」

「最初は、『もう少しで眠れるかも』って思うんです。でも、時間が経つにつれて不安がどんどん大きくなって……『もしこのまま一生眠れなかったらどうしよう』って思い始めるんです。それが怖くて……夢の中で、時計を何度も確認するんですけど、針が全然進まなくて、まるで時間が止まってるみたいで。」

彼女の声には、夢の中で感じた焦りがにじんでいた。

「その夢の中で、何か工夫をして眠ろうとしましたか?」

「はい……色々試すんです。深呼吸をしたり、羊を数えたり、リラックスできる音楽をかけたり。でも、何をやってもダメで……逆に頭がどんどん冴えてきて、目がギンギンに冴え渡る感覚になるんです。『もう絶対に眠れない』って、心が折れそうになりました。」

彼女はその時の感覚を思い出し、肩を少しすくめた。

「眠れないという状況が、夢の中でどのような不安につながっていましたか?」

「『眠れないまま朝を迎えたらどうしよう』とか、『このまま寝ないと体がおかしくなっちゃうんじゃないか』とか、そんなことばかり考えていました。それがどんどん頭の中を埋め尽くして……最初は疲れを取るために横になったのに、逆に心が疲れていく感じがして。」

彼女の話を聞き、私はその夢が彼女に何を伝えようとしているのかを考えながら、さらに問いかけた。

「その夢の中で、何か印象的な出来事はありましたか?」

「夢の後半では、窓の外が急に明るくなって……朝が来たことに気づくんです。でも、その瞬間、すごく絶望的な気持ちになりました。『また一睡もできなかった』って。起きてから何もできない自分を想像して、体が重くて動けなくなる感覚が押し寄せて……その時点で、もう完全に追い詰められてしまったんです。」

私は彼女の体験が、どれほどリアルな感覚で彼女を苦しめたのかを理解した。

「その夢の中での不眠というのは、もしかすると、あなたが現実で感じている疲労やプレッシャーを象徴しているのかもしれませんね。最近、眠れないと感じたことはありましたか?」

彼女は少し考え込んでから答えた。

「そうですね……最近仕事で忙しくて、色々考えすぎてしまうことが多いです。寝ようと思っても頭の中で考え事が止まらなくて……もしかしたら、その不安が夢に出ているのかもしれないですね。」

診察室を後にする彼女の背中を見送りながら、私はその夢が彼女の心の奥底にある不安やストレスを映し出していると感じた。眠りたいのに眠れない――その追い詰められた感覚は、彼女が現実でも抱えているプレッシャーを象徴しているのだろう。彼女がこの不安から解放され、心から休息を得られる日が来ることを願っていた。



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