目次
奇妙な足音
サトシは、ある田舎町での仕事帰りに、不思議な体験をした。深夜になり、街灯もまばらな道を一人で歩いていると、背後から足音が聞こえたのだ。
「……誰かいるのか?」
振り返っても誰もいない。人気のない夜道を、ただ冷たい風が吹き抜けているだけだった。気のせいだと思い直して歩き始めると、再び足音が聞こえてきた。
――カツ……カツ……。
足音はサトシの歩調に合わせるかのように近づき、立ち止まると同時にピタリと止まる。背後からぞわりと冷たい気配が感じられ、心臓が鼓動を早めた。
「これは……まずいかもしれない」
そう直感したサトシは、ふと近くに見えた小さな神社へと足を向けた。
神社へのお参り
神社の鳥居をくぐった瞬間、不思議と周囲の冷気が薄れ、背後の気配が遠のくのを感じた。
「ここに入ったら……大丈夫なのか?」
そう思いながらも、サトシはお賽銭を入れ、軽く頭を下げた。夜の神社は静かで、少し不気味にさえ感じるが、どこか温かみも感じられた。
「どうか、守ってください……」
サトシは心の中でそう祈り、頭を下げて目を閉じた。ふと視界の端で何かが動いた気がして振り返ると、参道の奥にひっそりと佇むお社の陰に、一瞬、人影のようなものが見えた気がした。
だが、その人影はすぐに消え、辺りは再び静まり返った。
神社のご加護
お参りを終えて鳥居をくぐると、周囲の冷たい気配が再び忍び寄ってくるように感じた。しかし、サトシは不思議な安心感を抱きながら、自宅へ向かって歩き出した。
その時――
――ザザッ……
背後の茂みから何かが這い出てくるような音がした。振り返ると、暗闇の中に何かがじっとこちらを見つめている。薄暗い人影のようで、その輪郭はぼやけ、何か不気味な気配を纏っていた。
サトシはその場に固まり、どうしても目が逸らせなかった。動けないまま、その影がじわじわと近づいてくる。
「……どうしよう……!」
恐怖に駆られていたその時、突然、視界の端に小さな白い光が見えた。
その光は、神社の方向から伸びるように現れ、サトシの周囲を包み込んでいく。暖かなその光が広がると、目の前の不気味な影は怯えたように後退し、ついには完全に消えてしまった。
――スッと空気が変わり、再び静寂が訪れた。
お礼参り
その後、サトシは無事に自宅にたどり着いた。奇妙な体験が本当に起こったのか、それとも疲れた頭が見せた幻だったのか――そう思う一方で、サトシは神社に守られたような気がしてならなかった。
翌日、彼は改めてあの神社を訪れ、お礼参りをすることにした。
「昨夜は助けていただき、ありがとうございました」
静かにお賽銭を入れ、深く頭を下げる。すると、風に乗って、どこか懐かしい香りが漂ってきた。
「これからも、この地を守っていきます」
その声が確かに聞こえたかのように、心の中に響いた気がした。サトシは神社に手を合わせ、感謝の気持ちを込めてその場を後にした。
それ以来、サトシは毎年その神社にお参りに訪れるようになった。そして今でも時折、夜の帰り道で神社の方を見ると、柔らかな光が彼の周りを包み込んでくれるような気がするという。
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