仕事の悩みや日常の不安に押しつぶされそうになり、僕はふと、神社にお参りに行こうと思い立った。近所の小さな神社は、静かで落ち着ける場所だった。幼い頃から親しんでいたが、ここ最近はほとんど足を運んでいなかった。
日が暮れる少し前、神社の境内は薄暗く、木々がざわざわと風に揺れていた。いつもの狛犬や鳥居、そして手入れの行き届いた社殿――なんだか、帰る場所に戻ってきたような懐かしさが胸に広がる。
社務所のあたりで軽く頭を下げ、手を合わせて願いを込めた。「どうか、平穏な日々が訪れますように」と。
目次
奇妙な気配
お参りを終えて帰り道を歩いていると、どこかで誰かの視線を感じるような気がした。
振り返っても、境内には誰もいない。少し気味が悪く感じたが、神社を背にして住宅街の方へ戻り始めた。
すると、また何かが背後からついてきているような気配がした。足音もなく、物音ひとつしないが、明らかに人の気配がする。
僕はだんだんと早足になり、その気配から逃れるように自宅へと急いだ。
恐怖の影
自宅に戻ると、ほっと一息ついた。外の気配は家の中まで追いかけてはこない――そう思っていたが、違った。
夜が深まり、窓の外が静まり返った頃、家の中に何かがいるような気がしてならなくなった。
視線を感じるだけでなく、背後に黒い影がさっと動く気配がする。
恐る恐る振り返ると、誰もいない。けれど、すぐ後ろに「何か」がいる――そんな気配が絶え間なく僕を包み込むようになった。
神社の記憶
ふと、神社のお参りで感じた温かさを思い出した。ここでこうして怯えているより、あの神社に行けば何かが助けてくれるかもしれない――そんな気がして、僕は神社へ向かう決意をした。
真夜中に、再び神社へと足を運ぶのは勇気が必要だったが、助けを求めるしかないと思ったのだ。
真夜中の神社
夜の神社は、昼間のそれとはまるで違う。鳥居をくぐると冷たい空気が全身を包み込み、薄暗い社殿が幽かな明かりを放っている。
僕は境内の中央で足を止め、深く息を吸ってから手を合わせた。
「どうか、ここにいるものから、僕をお守りください……」
そう願うと、社殿の方からかすかに鈴の音が聞こえた。
鈴の音はだんだんと大きくなり、境内に静かな力が満ちていくようだった。
影の正体
その時、背後から誰かが僕を見つめているような感覚がした。振り向きたくなかったが、勇気を振り絞ってゆっくりと後ろを向いた。
すると、そこには黒い人影が立っていた。
顔ははっきり見えないが、ただの影ではない、何かの気配が強烈に伝わってきた。影はまるでじっとこちらを見つめているようで、背筋が凍りついた。
その時、社殿の方からさらに強い鈴の音が響き渡り、光のようなものがふっと境内を包み込んだ。
神社の守り
鈴の音とともに、社殿の奥からまばゆい光がさし、その光が黒い影の方へと向かって流れていった。
黒い影は、光を浴びるとゆっくりと後退し、次第に薄れていく。影が完全に消え去ると、境内にはまた静寂が戻り、鈴の音も止んだ。
その場に立ち尽くしていた僕は、ふと体が軽くなったのを感じた。
神社は、僕を守ってくれたのだろうか――。
朝の光
その後、僕はしばらく神社に足を運んでお礼を伝えるようになった。毎回、鈴の音が優しく響くたびに、あの出来事を思い出す。
以来、あの黒い影に悩まされることはなくなった。
あの夜、お参りした神社は、確かに僕を見守ってくれていたのだと、今でも信じている。
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