仕事も人間関係もうまくいかず、心が押しつぶされそうな気分だった。毎日が同じ繰り返しで、ちょっとしたことでも自分に嫌気がさしてしまう。どこかに逃げ出したくても行く場所もない――そんな気持ちで、僕は近所の神社に向かっていた。
鳥居をくぐると、いつもの静けさが僕を包んでくれるようで、少しだけ安心する。苔むした石段を上りながら、ふと立ち止まり、神社の奥に目をやった。
目次
神社での願い
境内にたどり着くと、僕は目を閉じて、静かに心の中で願いを込めた。
「もう、どこか別の場所に行きたい。ここじゃない場所で、もう少し楽に生きられる場所があれば……」
目を開けると、少し冷たい風が吹いていた。まわりを見渡すと、いつの間にか夕暮れが近づいているようで、空が不思議な薄紫色に染まっている。
不思議と心が落ち着き、神社の奥に視線を移すと――見覚えのない古びた小道が続いていた。
異世界への道
好奇心に駆られ、僕はその小道を歩いてみることにした。道はくねくねと森の中へと続いており、空気がどこか清らかで澄んでいる。歩くたびに感じる柔らかな風、木漏れ日に照らされた葉の色――いつの間にか、僕は心が軽くなるのを感じていた。
やがて小道を抜けた先に、見たこともない世界が広がっていた。空は虹色の光を帯び、透き通るような湖が広がり、遠くには緑の丘が連なっている。まるで夢の中にいるような、幻想的な世界だ。
別の世界での出会い
「ここが……僕の望んだ場所?」
僕は呆然と立ち尽くしていると、どこからか穏やかな声が聞こえてきた。振り返ると、真っ白な服を着た女性が微笑んでこちらを見ていた。
「ようこそ、あなたが心から求めた場所に」
彼女の言葉には不思議な温かみがあり、自然と心が落ち着いた。僕はその場でただ立ちすくんでいたが、女性はにっこりと微笑み、指差す方向を見てほしいと言った。
そこには、自分が自由に暮らすことのできる素朴な家が建っていた。木でできたシンプルな建物で、窓からは湖が見渡せ、辺りには美しい花が咲き乱れている。
「ここであなたは、自由に暮らせます。この場所では何もあなたを縛るものはなく、ただ穏やかで、心地よい日々が続くでしょう」
幸せな日々
彼女の言葉に導かれるように、僕はその家での生活を始めることにした。朝は小鳥のさえずりで目を覚まし、湖のほとりでのんびりと過ごす。どこまでも静かで、穏やかな日々が流れていく。
毎日、遠くの森に散歩に行き、夜になると満天の星を見上げる。いつの間にか、心の奥にあった嫌な気持ちや不安がすっかり消えてしまった。
この場所では、何も焦ることがない。何も求められず、ただのびのびと自由に過ごせる。
もう戻りたくない
ある日、僕はふと考えた。「もう二度と、元の世界に戻らなくてもいいかもしれない」と。ここでの生活には不安も苦労もない。ただ、美しい風景の中で穏やかに過ごしているだけで、心が満たされていく。
あの神社に戻りたいとも思わない。ここでなら、僕はやっと望んでいた「心地よい生活」が送れるのだから。
そう決心してからは、さらにこの異世界が愛おしく感じられるようになった。
異世界での暮らし
それ以来、僕は毎日この異世界で過ごしている。あの神社のお参りから始まったこの奇妙な物語は、まるで夢のようだけれど、これは確かに僕が手に入れた現実だと思う。
僕はもう、元の世界に戻ることはないだろう。ここでの暮らしこそが、僕にとっての本当の「生きる意味」なのだから。
それからも、この異世界での穏やかな生活は、ずっと続いている。
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