仕事も生活も、全てに疲れ果てていた。毎日が重苦しく、どんなに頑張っても空回りしてばかりで、希望が見えない。そんなある日、ふと立ち寄った近所の神社で、何もかもを忘れて願い事をしてみることにした。
境内に続く石段を上り、薄暗い夕方の空の下で手を合わせた。そして、心の中でそっと呟いた。
「……少しでも、楽に生きられるようになりますように……」
目を閉じて願い、ゆっくりと目を開けた瞬間、急にめまいが襲ってきた。神社の景色がぐるぐると歪み、体が宙に浮いたような奇妙な感覚に包まれる。
目次
見慣れたはずの違和感
やがてめまいが収まり、周囲が落ち着きを取り戻したとき、ふと周りを見渡してみた。そこには、いつもの神社の風景が広がっていた。けれど、どこか違うような気がする。木々の色が少し淡く、鳥居もやけに高く感じられ、空気にどこか異質な静けさが漂っている。
「……気のせい、かな?」
そう思いながらも、心にふわりとした不安と安堵が入り混じった。神社を出ると、歩く足が軽くなったように感じた。今までの心の重さが少し和らいで、呼吸が楽になっている。
不思議な変化
家に帰ってからも、何となく違和感が続いた。普段なら嫌に感じるはずの家の静けさが、今は不思議と心地よい。そして翌日、いつものように会社に出勤したとき、同僚たちの視線や会話がどこか遠く感じられた。以前のような重圧や気疲れを感じることが少なくなっている。
「なんだか、少しだけ生きやすくなってる……」
いつも嫌だと思っていた上司の小言も、なぜか聞き流すことができ、周囲の雑音もさほど気にならない。まるで現実の世界が少し優しくなったかのように、生活全体が軽くなった感覚が続いていた。
神社とのつながり
家に帰る途中、ふとあの神社のことを思い出した。お参りをしたあの日から、世界が微妙に変わったように感じるのだ。もしかして、あの神社で何かが変わったのだろうか?
「あの時のめまいが、もしかしたら異世界に迷い込んだってことなのかな……」
答えがあるわけではないが、そう思うと少しワクワクした。あの神社が、僕にとっての特別な場所になったような気がしてならない。
それから、僕はあの神社に足を運ぶようになった。仕事帰り、悩んだとき、心が揺らいだとき。神社の静けさと空気が、不思議と心を安らげてくれる。
もしかしたら、今いるこの世界は、元いた場所とは違うのかもしれない。でもそれがどうであれ、少しずつ生きるのが楽になったこの世界は、きっと僕にとっての新しい場所なのだ。
そう思いながら、僕はまた手を合わせ、心の中で感謝を伝えた。
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