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神社のおまいりと白昼夢 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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ある土曜日の昼下がり、僕はふと神社にお参りしようと思い立った。最近、仕事もプライベートもうまくいかず、なんだか気分が落ち込んでいた。心を落ち着けたくて、近所の神社を目指した。

昼間の神社は静かで、鳥居をくぐると涼しい風がふわりと吹き抜けた。境内に足を踏み入れると、僕の心も少し軽くなった気がした。

境内での白昼夢

手を合わせて目を閉じ、しばらくお参りをしていると、急に体がフワリと浮かぶような感覚に包まれた。目を開けると、なぜか境内の景色がぼんやりと歪んでいる。昼間のはずなのに、どこか薄暗く、静寂がいつもより重く感じられる。

「……どうしてこんなに静かなんだろう?」

辺りを見回すと、さっきまでの明るい神社とはまるで違う世界になっていることに気づいた。空気が冷たく、風も止んでいる。なんとなく、今いる場所が現実とは違う、夢の中のような不思議な感覚に囚われた。

「これは、白昼夢……なのか?」

心の中でそう呟きながらも、全身に広がる不安を拭いきれなかった。

神社の異変

境内の奥にある社殿の方を見ると、社殿がやけに黒く沈んで見えた。普段は静かな佇まいの社殿が、今はまるで生きているかのように、こちらを見つめているように感じる。

その時、社殿の奥から小さな人影が歩いてくるのが見えた。よく見ると、それは年老いた巫女のような姿をした女性だった。白い装束に朱の袴を身にまとい、ゆっくりと僕に向かって歩み寄ってくる。

「ここは……いけない場所……戻りなさい……」

彼女は小さな声で何かを呟いている。耳に届く言葉は断片的で意味がつかめないが、不思議と僕の心に響いてきた。

帰り道の迷い

恐怖心からその場を離れようと足を動かすが、なぜか境内から出られない。鳥居に向かって何度も歩いているのに、気づくとまた社殿の前に戻ってしまう。

「どうして……?」

焦りと不安が膨らむ中、再び巫女の姿が視界に入った。彼女の目が僕をまっすぐ見つめている。心の中で叫びたい衝動に駆られながらも、声が出ない。

「……戻る道はここ……」

彼女が指差したのは、社殿の裏手にある薄暗い小道だった。ためらいながらも、僕はその指示に従って小道へと足を踏み入れた。

戻ってきた現実

足を進めると、次第に境内が明るくなり、周囲が元の神社の風景に戻っていく。いつの間にか鳥のさえずりが聞こえ、風も吹いている。振り返ると、巫女の姿は消えていた。

「さっきのは……夢だったのか?」

周囲を見渡しても、昼間の静かな神社がそこにあるだけだ。さっきまで感じていた不気味な気配もなくなっていた。

神社からの警告

後日、あの白昼夢が気になり、地元の古い話を調べてみたところ、かつてその神社には「異界への門がある」という伝説があった。社殿の奥にある小道は、かつて亡くなった巫女が道に迷った者を救い導いたとされる場所だという。

あの日見た巫女の姿――あれは、僕を助けてくれたのかもしれない。神社の静かな空気に満ちた午後の光を浴びながら、僕は再び巫女に感謝の気持ちを込めて手を合わせた。

今でも、境内に足を運ぶたびに、どこかで彼女の静かな声が聞こえる気がする。



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