仕事もプライベートも行き詰まり、自分の人生が嫌でたまらなくなっていた。毎日が疲れと失望の繰り返しで、この先、どんなに頑張っても何も変わらないような気がしていた。
「どうにか人生が変わってほしい……」
ふと、そんな想いに駆られて、僕はふらりと近くの神社に足を運んだ。子供の頃から慣れ親しんでいた場所ではないが、願いを込めるには十分な静けさと落ち着きを感じる。鳥居をくぐり、ゆっくりと社殿の前に立った。
目を閉じて、心の中で願う。
「どうか、僕の人生を良いものに……変わりますように……」
深く息を吐き、そっと目を開けた瞬間、見慣れたはずの境内の様子が――どこか違う。
目次
戻った過去の神社
そこは、まぎれもなく小学生の頃に住んでいたあの町の神社だった。社殿の古びた佇まいも、参道に敷き詰められた石段も――すべてが、昔の記憶そのままだ。
(どうしてここに……?)
戸惑いながら周囲を見回すと、ふと背中に違和感を覚える。肩に何か硬いものが食い込んでいるような――。振り返ると、自分の背中にはランドセルが背負われていた。
さらに驚くことに、小さな手足、低い視点。鏡を見なくても、自分が小学生の姿に戻っていることがはっきりとわかった。
「おい、なにおまいりなんかしてんだよ!」
突然、背後から声がして、振り向くとそこには見覚えのある顔が。かつて一緒に遊んでいた幼なじみのアキラだ。目の前に立つ彼の笑顔は、まさに自分が小学生だった頃と同じだ。
「帰るぞ、早く!」
アキラがランドセルを背負って走り出し、僕も思わず後を追った。
過去の生活
道すがら、僕は不安と同時に、どこか懐かしい気持ちに包まれていた。アキラと一緒に走り抜ける見慣れた通学路、昔ながらの家並み、そして――昔の自分の家がそのままの姿でそこにあった。
帰宅すると、リビングには若い姿の母がいて、笑顔で「おかえり」と声をかけてくれた。母の温かい笑顔と若々しい声を久しぶりに感じて、思わず目頭が熱くなった。
その日から数日間、僕は小学生の生活を送ることになった。朝はランドセルを背負い、友達と一緒に学校へ通い、放課後は公園で遊んで、夕暮れには家族と夕食を囲む――そんな日々の一つひとつが新鮮で、楽しくて、今の自分には何もかもが愛おしい。
再び神社へ
ある日の帰り道、また神社の前を通りかかり、ふと思い立って境内に入った。小さな手で手を合わせた瞬間、境内の奥から不思議な声が響いてきた。
「このまま小学生のまま生き直すか、元の世界に戻るか――どちらを選んでも、その道があなたの人生になります」
その声は、温かさとともに何かを問いかけるような、優しさに満ちていた。ここで新しい生活を送るか、それとも一度大人として積み上げてきた今の人生に戻るか――決断を迫られているのだ。
目を閉じて静かに考えると、ここ数日間、母や友達と過ごした生活が思い出される。小学生としてもう一度家族や友人とともに過ごせる生活、やり直すことで得られる新しい未来の可能性――そのすべてが魅力的に思えた。
僕はそっと口を開き、決意を告げた。
再び歩む人生
「このまま……小学生として生き直したい」
そうつぶやくと、柔らかな光が体を包み込むように感じた。目を開けると、目の前にはいつもの神社の景色が広がっていたが、今度は心が静かで穏やかな気持ちで満たされていた。
その日から、僕は小学生としての生活をまた一からやり直すことになった。大人としての記憶はゆっくりと薄れていったが、今度は悔いのないように家族と友達を大切にし、少しずつ自分の人生を見つめ直して生きることにした。
何度も歩いたはずの道も、何度も見たはずの景色も、すべてが新しく、そして美しく感じられた。
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