目次
つらい日々
会社員のリョウは、疲れ果てていた。毎日長時間働き、職場では次々と増える業務に追われ、上司からの叱責も絶えない。帰宅しても心休まることはなく、ただ寝て起きて会社に行く日々が繰り返されていた。
「こんな生活、もう嫌だ……」
心の中で何度もそう呟きながら歩いていたある日、ふと見上げると、目の前に小さな神社が見えていた。
普段は気にも留めなかったその神社。だが、その日は不思議と、何かに引き寄せられるように鳥居をくぐり、境内に足を踏み入れていた。
「どうか……どうか、少しでもこの苦しい現実から抜け出せますように……」
賽銭を入れて手を合わせ、そう願いを込めて目を閉じる。深く祈り、思い切り願ったその瞬間、リョウはふわりとめまいに襲われた。
いつもの神社……でも少し違う
めまいはほんの一瞬で収まったが、何かが変わったような感覚が残った。ゆっくり目を開けると、目の前にはいつもの神社の風景が広がっている。だが、どこか微妙に違うような気がした。
木々の葉が少し鮮やかに見え、鳥のさえずりがどこか心地よく響く。参道の石段も、いつも見慣れていたものとは違い、どこか温もりを感じる。
「……気のせいかな」
そう思いながらも、心の奥に引っかかる違和感が残り続けていた。神社を出てからも、頭の中がどこかぼんやりとしていて、気がつくと心が少し軽くなっている。自分でも不思議だったが、辛さが少し薄れたように感じられた。
変わっていく日常
家に帰っても、その違和感は消えなかった。普段なら疲れてぐったりしているはずなのに、心の中にほのかな安らぎが漂っている。そして翌朝、会社に向かうリョウは、心のどこかに「昨日までと違う自分」を感じていた。
オフィスに入っても、上司の怒声や終わらない仕事に追われるのはいつも通りだったが、不思議と体が軽い。以前の自分ならすぐに心が折れてしまう場面でも、どこか平静でいられるのだ。
「もしかして、昨日の神社のお参りが……?」
それが関係しているのかは分からないが、リョウの心には、今までにない静かな気持ちが広がっていた。現実がまるで少しだけ違う世界に変わったかのようで、会社を出た後も妙に穏やかな気分が続いた。
神社への再訪
それから、リョウは定期的に神社に足を運ぶようになった。疲れたときやつらいとき、神社に行ってお参りをすると、なぜか心が少しずつ軽くなる気がする。
「何でか分からないけど、ここに来ると落ち着くな……」
特に何かが変わったわけではない。いつもの神社で、ただ静かにお参りをするだけ。でもそのたびに、少しずつ気持ちが楽になり、仕事や人間関係に押しつぶされそうになっていた日常が、どこか穏やかに、そして生きやすくなっていくように感じられた。
やがてリョウにとって、神社は大切な場所になった。どれほどつらい日でも、心が乱れてしまうときでも、神社で手を合わせるだけで少しずつ心が安らいでいく。そして、次の日にはもう少しだけ現実が楽になるような、そんな気がしてくるのだ。
リョウにとって、神社は現実を少しだけ違う形に変えてくれる、不思議で安らぎをくれる場所となった。彼は何度もその場所を訪れ、穏やかな心で日々を過ごせるようになっていった。
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