目次
公園でのひととき
タカシは、仕事帰りに家の近くの公園に寄るのが日課だった。忙しい日常から解放されて、少しの間だけでも静かに過ごせる場所が欲しかったからだ。公園の片隅には大きな木の下に古いベンチがあり、彼はいつもそこに座ってぼんやりと夕暮れを眺めていた。
その日も、ベンチに腰を下ろして空を見上げていると、隣に誰かが座る気配がした。見ると、そこには見知らぬ老人が座っており、優しげな微笑みを浮かべていた。
「こんにちは。いい景色だねぇ」
老人はタカシにそう話しかけてきた。
「ええ、そうですね」
タカシは少し驚きながらも、微笑み返した。いつも一人で過ごしているこの時間に、誰かが話しかけてくるのは珍しいことだった。
不思議な老人
老人は柔らかい声で話し始め、タカシの仕事や趣味について気軽に尋ねてきた。話しているうちに、タカシは自然と緊張が解け、普段は話さないような自分の思いまで口にしていた。
「最近、仕事が忙しくてね……少し疲れてるんです」
すると老人は、優しく頷いて言った。
「そうかい。でも、こうして自然の中で一息つくのは大事だよ。心が落ち着けば、明日が少し楽になるものだ」
その言葉に、不思議とタカシの心が軽くなる気がした。何か温かいものが胸に広がっていくような感覚だ。
「また、ここに座っていたら会えますか?」
タカシがそう尋ねると、老人は穏やかに微笑み、こう答えた。
「どうだろうね。でも、この場所はいつでも君を待っているよ」
消えた老人
その後、ふと気づくと、老人の姿はいつの間にか消えていた。タカシは驚き、周囲を見回したが、公園にはもう誰もいない。気のせいだったのか――いや、確かにそこにいて話していたはずだ。
翌日もタカシは公園のベンチを訪れた。いつものように座って空を見上げると、不思議と心が軽くなり、あの老人の言葉が頭をよぎった。
「心が落ち着けば、明日が少し楽になるものだ」
その言葉に力をもらったタカシは、その日から少しずつ仕事に対しての見方も変わっていった。夜が明けると、どこかほっこりとした気持ちで一日を始めるようになったのだ。
温もりの残る場所
しばらくして、タカシは近所の人にあの老人について尋ねてみた。すると、少し驚いた顔をされ、こんな話を聞かされた。
「そのベンチに昔よく座っていたおじいさんがいたんだよ。ずっと前に亡くなったんだけど、あの場所は今でも彼の温かい気持ちを残しているって言われているんだ」
タカシはそれを聞いて、なんだか不思議な気持ちになった。あの時、彼が話した老人は、もしかして――。
それからもタカシは、時々公園のベンチに座って心を落ち着かせるのが習慣となった。そしてそのたびに、遠くで見守ってくれているような、あの温かい存在を感じていた。
タカシにとって、そのベンチは特別な場所となり、何かが上手くいかない日にも、心をほっこりと温めてくれる不思議な場所となった。
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