目次
寝つけない夜
ケンタはベッドに横たわりながら、天井を見つめていた。時計の針は夜中の2時を指しているが、どうしても眠れない。仕事の疲れや明日の心配事が頭の中を駆け巡り、心が落ち着かなかった。
その時、ベッドの横でうつらうつらしていた愛犬のポメラニアン、マロンが目を覚まし、ケンタの顔をじっと見つめてきた。マロンの大きな瞳はまるで「どうしたの?」と問いかけているようだった。
「マロン、寝れないんだよ、俺……」
マロンは小さな体を揺らしながら短いしっぽをふり、軽く鼻を鳴らした。ケンタはふと思い立ち、パジャマのまま起き上がるとリードを手に取った。
「少し外に出てみるか、マロン」
深夜の静けさに包まれた街を歩くのは不思議な気分だった。空は満天の星で覆われ、冷たい空気が頬に心地よく触れてくる。マロンはいつもと違う時間帯に外に出られたことが嬉しいのか、軽やかに歩きながらケンタを引っ張った。
静寂の中の発見
二人は近所の公園にたどり着いた。夜中の公園は誰もいないはずなのに、どこか温かい雰囲気が漂っていた。マロンは軽やかに芝生の上を駆け回り、ケンタはその姿を見て、心が少し軽くなるのを感じた。
「お前、こんな時間でも元気だな」
マロンはケンタの声に反応して振り返り、短い足で駆け寄ってきた。その瞳に映る街灯の光が、まるで小さな星のように輝いている。
ふと耳を澄ませると、どこかから微かな風鈴の音が聞こえてきた。誰も住んでいない古い家の庭先にかかっている風鈴が、夜風に揺らされていたのだ。ケンタはその音を聞いて、昔、祖父母の家で聞いた夏の夜を思い出し、懐かしい気持ちに包まれた。
不思議な出会い
その時、公園の奥から足音が聞こえた。思わずケンタが振り向くと、暗闇の中から小さな影が現れた。よく見ると、それは一匹の野良犬だった。白くふわふわとした毛並みで、目が優しく光っている。
マロンは一瞬、警戒するように立ち止まったが、その犬が近づくにつれ、しっぽをふり始めた。野良犬もマロンに対して親しげに近寄り、二匹はまるで旧友のように顔を合わせてじゃれ合い始めた。
「こんな時間に……君も寝つけなかったのか?」
ケンタは冗談めかしてその犬に話しかけた。野良犬はまるで話が分かるかのように、ケンタの足元に寄り添い、静かに座った。
月明かりが公園を照らし、三人の影が静かに揺れた。その瞬間、ケンタの心にずっと抱えていた不安がふっと軽くなった気がした。マロンとその犬が一緒に遊ぶ姿を見て、ケンタは微笑んだ。
帰り道
やがて夜風が冷たさを増し、ケンタは帰ることにした。野良犬は、まるで見送るように立ち上がり、優しくしっぽを振った。
「またな、今度はおやつでも持ってくるよ」
ケンタが手を振ると、野良犬は小さく吠えて、それがまるで「ありがとう」と言っているように聞こえた。マロンも振り返って小さく吠え、その声は公園の静寂に溶けていった。
家に戻ったケンタは、ベッドに横たわり、マロンをそっと撫でた。マロンは満足そうに丸くなって眠りについた。ケンタは目を閉じ、あの風鈴の音と二匹の犬の楽しそうな姿を思い浮かべた。
今度こそ、心が安らぎ、自然と眠りに落ちていった。
ケンタにとって、あの夜中の散歩はただの偶然ではなく、心を癒してくれる小さな奇跡だったのかもしれない。
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