その夜はどうにも寝つきが悪く、布団に入っても目が冴えてしまった。時計を見るともう夜中の2時を過ぎている。部屋は静まり返り、窓の外では風が葉を揺らす音だけが聞こえる。普段はこんな時間にはとっくに夢の中なのに、この日はなぜか眠れなかった。
「仕方ないな……」とため息をつき、寝返りを打ったその時――。
ふと、部屋の片隅に暖かな光がふわりと灯った。電灯ではない。もっと柔らかく、心地よい光だ。驚いてそちらを見つめると、小さな人影が立っているのが目に入った。
目次
小さな訪問者
目を凝らすと、それは小さな妖精のような存在だった。背丈は手のひらほどで、薄い羽がきらきらと輝いている。顔は穏やかで、見つめていると不思議と恐怖心は湧いてこなかった。
妖精はにっこりと微笑み、僕に手招きをした。動けないほど驚いていたが、心が落ち着いてくると、何となくその場の空気が優しく包み込んでくれるような気がした。
「眠れない夜は、時々こうして見守りに来るんだよ」
彼は小さな声で話し始めた。夜に眠れない人々の夢を守るために、時折こうして現れるという。話を聞くうちに、心がじんわりと暖かくなっていく。
一晩限りの交流
妖精は窓辺に飛び移り、空を見上げた。僕もつられて視線を上げると、満天の星空が広がっていた。星は普段よりも輝きが強く、まるでこちらを励ましているようだった。
「今夜は特別な夜だ。君が目覚めたとき、この夜のことをきっと良い夢だったと感じるだろう」
その言葉にうなずくと、彼はもう一度優しい笑顔を見せ、ゆっくりと光を弱めながら消えていった。
朝の穏やかさ
気がつくと、僕は布団の中で眠りについていた。心地よい朝の光が差し込む中、心がとても穏やかだった。あの妖精は本当にいたのだろうか――夢だったのだろうか。
枕元に目をやると、小さな花びらが一枚落ちていた。夜風が吹き込んだのかもしれないし、あるいはあの訪問者が残してくれたものかもしれない。
僕は微笑みながら花びらを手に取り、その夜の出来事をほっこりと思い出していた。
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