その夜、どうしても眠れなかった。時計を見ると夜中の1時を過ぎている。ベッドに横たわっても頭の中は忙しく、目を閉じても何かに追い立てられているような気分だった。
ふと、足元で何かが動いた気配を感じて顔を向けると、僕の愛犬ハルがつぶらな瞳でこちらを見上げていた。黒く光る毛並みのミニチュアシュナウザーだ。大きな耳をピンと立て、少し首をかしげている姿に思わず笑みがこぼれた。
「ハル、散歩に行くか?」
夜中の1時過ぎに散歩なんて異例だったが、ハルは尻尾をブンブン振って喜びを示した。
目次
深夜の街へ
夜中の静かな街は、昼間とはまったく違う雰囲気だ。道を照らす街灯はほのかで、空気はひんやりとしている。冷たい風が頬を撫で、頭の中に溜まった思考が少しずつ和らいでいく。
ハルは嬉しそうにリードを引っ張り、鼻をクンクンと動かしながら歩いている。街はほとんど人影がなく、静けさが広がっていた。遠くからは、風に乗ってかすかな犬の吠え声が聞こえてくる。
不思議な出会い
歩き続けるうちに、人気のない公園にたどり着いた。普段は子どもたちの笑い声で賑わうこの場所も、夜中の今はひっそりと静まり返っている。ハルはそのまま公園の中に進み、僕もリードを持ちながらついていった。
公園の中央に立つと、突然、風が強く吹き抜けた。その風の中に、どこか懐かしいような香りが混じっていた。僕は思わず立ち止まり、空を見上げた。月が青白く光り、雲がゆっくりと流れていく。
その時、ハルが急に動きを止め、じっと一点を見つめ始めた。目の先には、誰もいないベンチがある。ハルの尻尾は下がっていないが、耳をぴくりと動かしている様子に、何か感じ取っているように見えた。
静かな安心感
「どうした、ハル?」
声をかけると、ハルは一度こちらを見てから、再びベンチの方を見つめた。しかし、不思議なことに僕は怖さを感じなかった。むしろ、その場には心地よい静けさが漂い、胸の奥が温かくなるような感覚が広がった。
ハルもその感覚を感じ取ったのか、再び鼻をひくひくさせて、リラックスした表情になった。そして、僕の足元に戻り、ちょこんと座ってこちらを見上げた。
「……よし、帰ろうか」
帰り道と穏やかな眠り
帰り道、空気はまだひんやりとしていたが、心は落ち着いていた。何が起こったのかはわからなかったけれど、ただハルと一緒に深夜の街を歩くことで、心の中にあった重いものが軽くなったような気がした。
家に戻り、ハルは自分のベッドに飛び込んで丸くなり、すぐに寝息を立て始めた。僕も布団に横たわり、窓から入る月明かりを見ながら目を閉じた。
不思議と、心地よい眠りが訪れたのはその瞬間だった。ハルと歩いた深夜の散歩は、ただの散歩以上のものだったのかもしれないと思いながら、僕はそのまま深い眠りに落ちていった。
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