私は今でも、ときどき思い出すことがある。子供の頃に経験した、あの不気味な出来事。何気ない帰り道の中に潜んでいた恐怖が、記憶の奥底に残っている。
目次
不気味な出会い
小学生だった私は、友人のアカリと一緒に学校帰りの道を歩いていた。いつも通りの帰り道、夕暮れが空を染めて、遠くからカラスの鳴き声が聞こえてきた。その時、道端の雑草にまぎれて何かが見えた。
「見て、あれ何?」
アカリが指差した先には、古びたアンティーク人形があった。金色の髪がぼさぼさに乱れ、青いガラスの瞳がどこか悲しげに輝いている。その人形は、不気味なまでに精巧で、今にも動き出しそうなほどリアルだった。
「誰かの忘れ物かな……?」
二人で顔を見合わせ、不安と好奇心が入り混じった気持ちでその人形を拾い上げた。そして、二人の秘密の場所――近くの空き地の奥にある小さな秘密基地に持ち帰った。
始まった異変
最初はただの遊びの一部だった。秘密基地の中にその人形を置いて、私たちは笑い合った。しかし、数日後から奇妙なことが起き始めた。
ある日、秘密基地に入ると、人形がいつもの場所から移動しているのに気づいた。
「アカリ、これ動かした?」
「ううん、昨日そのまま置いて帰ったよ」
無言のまま二人は顔を見合わせた。重苦しい沈黙が場を支配し、その時から不安が芽生え始めた。
さらに、秘密基地にいるときだけ、不自然な足音や低いうなり声が聞こえるようになった。音の出どころを探そうとしたが、周囲には誰もいない。ただ、あの人形のガラスの瞳だけが光を反射し、私たちを見つめていた。
もう行かないと決めた日
ある日、秘密基地で遊んでいると、急に人形がカタッと倒れた。風もなく、触れたわけでもないのに。アカリの顔は青ざめ、私も声が出なかった。
「……もう、この場所には来ないほうがいい」
アカリが震える声で言った。私たちは頷き合い、人形をそのまま秘密基地に置き去りにして走り去った。帰り道、後ろを振り返ると、秘密基地の奥であの人形がじっとこちらを見ているような気がした。
その日を最後に、私たちは二度と秘密基地へは行かなかった。そして、不思議なことに、その後は何事もなく、日常に戻っていった。
大人になった今
今、私は大人になり、あの頃のことを思い出すたびに背筋が冷たくなる。あのアンティーク人形は一体何だったのだろう?あの出来事が本当にあったのか、それとも子供心のいたずらだったのか。
時折、古いものを見かけると、無意識に足が止まる。あの青い瞳の人形は、まだあの秘密基地にあるのだろうか。それとも――。
そんな考えが頭をよぎると、胸の奥にかすかな恐怖が蘇る。
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