目次
アンティーク店での出会い
ユカリは週末の散歩で、自宅の近所にある古びたアンティーク店を訪れた。店内には年代物の家具や小物が所狭しと並び、埃っぽい香りが漂っている。その中で、ユカリの目にとまったのは、大きなガラスケースに入った一体のアンティーク人形だった。
その人形は繊細な顔立ちをしており、大きなガラスの瞳が何かを語りかけるように見つめていた。長い金色の巻き毛、青いドレス――それは一見、美しい人形に見えたが、その視線にはどこか不気味なものを感じさせるものがあった。
「妙に生々しい目をしているわね……」
しかし、ユカリはなぜかその人形に惹かれ、購入して自宅に持ち帰った。
不安な夜
家に帰り、人形をリビングの棚に飾ると、ユカリは愛犬のシロが吠え始めた。シロは小さなチワワで、普段はおとなしいが、その日だけは珍しく、吠え続けている。
「シロ、どうしたの? 怖くないよ、大丈夫」
ユカリがシロを撫でても、その視線は人形に向けられたままだ。しばらくして吠えるのをやめたが、シロは怯えた様子でユカリの後ろに隠れていた。
夜になると、家の中はしんと静まり返り、風の音が窓の外でうなっている。ユカリはリビングのソファでくつろぎながら、その人形の視線が自分に向いているように感じた。わずかな隙間から、ガラスの瞳がかすかに光っているように見えた。
「ただの人形よ……」
自分にそう言い聞かせたが、どこか落ち着かない気持ちを拭いきれなかった。
深夜の異変
深夜、ユカリは寝室で目を覚ました。微かな物音がリビングから聞こえてくる。カタ……カタ……。まるで何かが動いているかのような音。
心臓がドキドキと音を立てる中、ユカリは恐る恐るベッドを降り、廊下を通ってリビングへと向かった。暗闇の中で、シロが吠える声が聞こえ、その音にさらに緊張が走った。
リビングに足を踏み入れると――。アンティーク人形が棚から落ちていた。その顔は床に向いていたはずなのに、まるでユカリを見つめているかのようにこちらに顔を向けていた。
シロはその人形の前で尻尾を下げ、低くうなり声を上げている。人形の瞳は、かすかに光を放っていたように見えた。
「こんなの……ただの偶然よ」
声を震わせながら人形を拾い上げ、棚に戻そうとしたその時――耳元でかすかな囁き声が聞こえた。
「――みんな……いなくなる」
その瞬間、シロが急にユカリの足元に駆け寄り、歯をむき出しにして人形に向かって吠えた。驚いて人形を落とすと、その頭部が割れ、中から小さな紙片が転がり出た。そこには、古びたインクで「終わりは近い」と書かれていた。
恐怖の真相
ユカリは怖くなり、その夜はシロを抱きしめながら寝室に引きこもった。眠れないまま朝を迎え、リビングへ戻ると、人形は棚の上で頭部が割れた姿で佇んでいたが、周囲に何か違和感が漂っている。
「あの人形、処分しないと……」
すぐに人形を処分場に持っていき、手放したユカリ。しかし、その夜、再び微かな囁き声が耳元で響いたような気がした。
「――見つけるから……」
シロはその瞬間も、彼女の横で怯えながら守るように身を寄せていた。
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