目次
過去の思い出
ユリは夜、書斎で昔のアルバムをめくりながら、小学生の頃の思い出に浸っていた。懐かしい写真の中には、友人のアキと一緒に撮ったものもあり、ふとした瞬間に胸が暖かくなった。しかし、同時に背筋をぞくりとさせる記憶が蘇った。
「そういえば……あの人形、どうなったんだろう……」
それは、決して忘れられない小学生の時の怖い体験だった。
道端の人形
あの日、学校帰りの道をアキと二人で歩いていた時のこと。薄暗くなりかけた夕暮れの中、歩道の隅に何かが落ちているのが見えた。それは、ほこりをかぶったアンティーク人形だった。精緻に作られた顔立ちと、不気味なほど大きなガラスの瞳。服は豪華なレースで飾られていたが、どこか時代を感じさせる古めかしさが漂っていた。
「ねぇ、これ拾ってみようよ!」
アキの声に促され、ユリはためらいながらもその人形を拾い上げた。冷たくて硬い手触りに、少しだけ心がざわついた。
「秘密基地に持っていこう。誰にも見つからないように、あそこで遊ぼうよ!」
二人の秘密基地は公園の奥の小さな林に作った、小屋とは言えないようなしろもの。しかし、二人にとっては自分たちで作ったりっぱな家だった。そこは二人だけの特別な場所で、よく学校帰りに寄り道して遊んでいた。
秘密基地での奇妙な出来事
秘密基地に着くと、ユリは人形を小さな椅子に座らせた。まるで見守るかのように置かれた人形は、夕暮れの赤い光を反射し、瞳がきらりと光って見えた。
「なんか……こっち見てるみたいじゃない?」
アキが少し不安そうに呟いた。その時から、小さな奇妙な現象が起き始めた。風もないのに木々がざわざわと揺れ、小屋の中にひやりとした空気が流れ込んできた。遠くで子供の笑い声が響いたかと思うと、急に静寂が訪れた。
「気のせいだよ、きっと……」
そう言いながらも、二人は次第に言葉を失い、黙って座り込んでいた。小屋の中で息をひそめる中、人形の瞳が暗闇の中で微かに動いたように見えた。
翌日から、秘密基地に行くたびに奇妙な現象は続いた。誰も触っていないのに人形の位置が変わっていたり、小屋の外から足音が聞こえたり。ある日は、小屋の壁に細い傷跡が刻まれているのを見つけた。まるで小さな手で何かを掻きむしったような痕だった。
決して戻らないと決めた日
ある日、ユリとアキは小屋に入った途端、頭上からかすかな声が聞こえてきた。囁くような、古びた音。二人は恐怖に駆られ、小屋を飛び出して一気に駆け出した。息を切らせて遠くまで逃げた後、アキは震える声で言った。
「もうあそこには行かないって約束しよう……二度とね。」
ユリは黙って頷き、二人は無言で手を握り合った。その日以来、秘密基地には足を運ぶことはなかった。あのアンティーク人形はそのまま置き去りにされ、二人の記憶に封じられることとなった。
現在に戻って
ユリはアルバムを閉じ、静かな部屋に目をやった。あの時の記憶はいつも胸の奥にあったが、年を重ねるにつれ、少しずつ薄れていった。しかし、その夜だけはどうしても思い出してしまった。
「結局、あの人形は何だったんだろう……」
窓の外に風が吹き、葉がさやさやと音を立てた。ユリの中には、いまだに説明がつかない恐怖と、ほんの少しの興味が入り混じった感情が残っていた。
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