診察室には静かな空気が漂っていたが、今日の患者は少し顔を曇らせて椅子に座っていた。定期的な質問が終わると、彼女は深呼吸をして、話し始めた。
「先生、最近ちょっと怖い夢を見たんです。起きた時もその音が耳に残っていて……」
私は彼女の表情から、夢がどれほど強い影響を与えているのかを感じ取り、優しく促した。
「どんな夢だったんですか?詳しく教えてください。」
彼女は少し考え込んでから、夢の内容を話し始めた。
「夢の中で、どこからか鈴の音が聞こえてきたんです。最初はすごく小さな音で、かすかに聞こえるくらいでした。だから、最初は気にも留めていなかったんですけど……その音がだんだん大きくなってきて……」
彼女の声はどこか遠くを見つめるような、緊張したものだった。私はその鈴の音に集中し、さらに質問を続けた。
「その鈴の音は、どのように感じられましたか?音の特徴や、どういう風に聞こえたのか覚えていますか?」
「はい。最初は小さな鈴が風に揺れているような、どこかでカラカラって鳴っている感じだったんです。音自体は優しい感じで……でも、時間が経つにつれて、その音がどんどん近づいてくるような感覚になってきて。気づいたら、音がどんどん大きくなって……耳の奥まで響くような、鼓膜が振動するような強い音に変わっていったんです。」
彼女はその音の不気味さを思い出し、身をすくめた。
「その音が大きくなるにつれて、どんな気持ちが湧いてきましたか?」
「最初はちょっと不安なだけだったんです。でも、その鈴の音がどんどん大きくなって、頭の中で響き出した時には、『もうやめて!』って思ってました。耳が壊れそうで、頭も割れそうな感覚がして……『お願いだから止まって』って必死に思っているのに、音が止まらないんです。」
彼女の声には、夢の中での強い恐怖がにじみ出ていた。
「その音が頭の中で響き渡った時、何か見えたり、感じたことはありましたか?」
「何も見えないんです。真っ暗な中で鈴の音だけが大きくなっていって……でも、どこかに誰かがいるような気配は感じました。でも、その人は絶対に姿を現さなくて、ただ音だけが鳴り響いて……耳も頭も限界って思った瞬間、夢から目が覚めました。」
彼女はその瞬間を思い出し、少し震えながら話を続けた。
「その夢から目が覚めた時、何か音や感覚は残っていましたか?」
「目が覚めた時も、まだ耳に鈴の音が残っている感じがして、ずっと頭の中で響いているような気がしました。でも、本当は何も聞こえていなくて……でも、その時の耳鳴りというか、頭の奥の響きが残っていて。あの夢はただの夢じゃない気がして、すごく不安になりました。」
彼女はその夢が単なる夢ではないかもしれないと感じている様子だった。私は、その鈴の音が彼女にとってどのような意味を持っているのかを探ろうと、さらに質問を続けた。
「その鈴の音が強く残っているということは、もしかすると、あなたが現実で感じている何かの不安やストレスが、夢の中で鈴の音として表現されているのかもしれませんね。最近、何か心配事や気になることがありませんか?」
彼女はしばらく考え込んでから、静かに答えた。
「実は、最近仕事でのプレッシャーがすごくて、頭の中が休まらない感じがしていたんです。もしかしたら、あの音はそのストレスを象徴しているのかもしれませんね……夢であの音がだんだん大きくなっていく感じ、現実でも何かに追い詰められているような気がして……」
彼女は夢が現実の不安と重なっていることに気づき始めたようだった。
診察室を後にする彼女の背中を見送りながら、私はその夢が彼女にとってどれほどの影響を与えたのかを思い返していた。夢の中の鈴の音――それは彼女の内面にある不安や、休まらない頭の中を象徴しているのかもしれない。彼女がこの音の恐怖から解放され、心から安らげる日が来ることを願っていた。
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