僕は、小学校のクラスメイトのタカシが不思議で仕方がなかった。彼はどこか落ち着きがなく、しょっちゅう悪ふざけや小さなトラブルを起こしていた。だが、ある日突然、彼の様子が変わった。
タカシが変わるきっかけは、クラスの誰もが怖がる猫屋敷だった。
猫屋敷は町外れにある、木造の古びた廃屋で、誰も住んでいないはずなのに、いつも窓や軒下には数え切れないほどの猫がたむろしている。その猫たちが、ただの猫とは違う――妙に鋭い目つきで人間を観察するように見つめてくるので、猫屋敷はちょっとした不気味な場所として噂になっていた。
目次
タカシが猫屋敷へ向かった日
ある日の放課後、タカシがふざけた顔で「猫屋敷に行ってみる」と言い出した。僕ともう一人の友人は驚いて、必死に止めたが、タカシは止めるどころか、僕たちをからかうように大笑いしていた。そしてそのまま、猫屋敷へ向かってしまった。
そして、次の日、タカシは学校に来なかった。最初は風邪か何かだと思っていたが、翌日も、その翌日も姿を見せなかったため、僕は不安と疑念を感じ始めた。
「もしかして、本当に猫屋敷で何かあったんじゃないか……」
そう思うと、居ても立ってもいられなくなり、友人と二人で猫屋敷を訪れることにした。
猫屋敷の異変
夕方、僕たちは猫屋敷の前に立っていた。古びた建物は見上げるほど高く、どこもかしこも汚れていて、見るからに不気味だった。草が生い茂る庭には、何匹もの猫が佇んでいる。
「タカシ……大丈夫だよな?」
小さな声で友人が言うのに僕はうなずいたが、正直言って全く自信はなかった。猫たちが僕たちに視線を送り、まるで不審者が来たとでも言わんばかりにじっとこちらを見つめている。僕たちは屋敷の中には入らず、少し離れた場所から窓を覗き込んだ。
屋敷の中には驚くほどの数の猫がいた。猫たちはじっと動かず、まるで屋敷の中の何かを守っているかのようだった。なぜかその猫たちには、普通の動物のような気配がなく、しっかりとした意識が感じられた。まるでこちらの考えを見透かすように、じっとした視線が僕たちに突き刺さってくる。
猫屋敷の窓の人影
怖くなった僕たちは急いでその場を離れ、足早に歩きながら猫屋敷からの視線を振り切ろうとした。だが、ふと友人と一緒に後ろを振り返ると――猫屋敷の二階の窓に、タカシが無表情で立っていた。
「タ、タカシ……?」
その瞬間、心臓が凍りつくような感覚に襲われた。窓に立っているのは確かにタカシだったが、何かが違う。彼は無表情のまま、こちらに向かってただじっと見つめている。その目は、まるでタカシの目ではないように感じられた。
別人のようになったタカシ
その翌日、タカシが学校に戻ってきた。しかし、僕は彼を見た瞬間、背筋が寒くなった。彼はいつものやんちゃなタカシとはまるで別人のようだったのだ。教科書を静かに開き、真面目に授業を受け、先生に対しても丁寧に返事をしている。周囲のクラスメイトとも円滑に話し、トラブルを起こさなくなった。
そのあまりの変わりように、教室中がざわついたが、先生は褒めるばかりで、誰も違和感には触れようとしなかった。だが、僕だけは何かが変だと感じていた。目の前にいるタカシが、まるで別の存在に変わってしまったかのように思えた。
校庭での恐怖
その日の放課後、僕は猫屋敷を訪れた友人と一緒に、教室でぼんやりとタカシのことを話していた。窓の外を見ると、校庭でタカシが一人で遊んでいる姿が見えた。
しかし、タカシの動きが妙だった。彼は猫のように四つん這いになり、地面を嗅ぎながら、不自然なまでにしなやかに歩き回っていた。その様子はまるで、校庭を遊ぶ場所ではなく、自分の縄張りとして見張っているかのようだった。
「……やっぱり、タカシはあの日のままじゃない」僕は声を絞り出すように呟いた。
それ以来、タカシはクラスでも完全に"変わった"ままで、かつてのやんちゃで生意気なタカシはもう戻らなかった。僕たちの間ではあの日以来、誰も二度と猫屋敷の話をすることはなくなったが、時折思い出しては背筋が寒くなる。まるで、猫屋敷にいる何かがタカシの中に入り込んでしまったかのように。
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