目次
「猫屋敷に行ってみないか?」
小学校のあるクラスで、やんちゃで有名なタケルが、「猫屋敷に行ってみないか?」と声を上げた。猫屋敷とは、町外れにある古びた木造の廃屋で、周囲には近寄るなと噂されていた場所だった。
「怖いのか? そこ、夜になると猫たちが集まるんだぜ?」
タケルは自慢げにそう話し、クラスメイトたちを煽った。誰も彼に付き合う気はなかったが、タケルはひとりで行くと宣言し、放課後に一人で猫屋敷へ向かった。
消えたタケル
次の日、学校に来るとタケルの姿がなかった。普段、賑やかで教室中を走り回っているはずのタケルが、今日に限って欠席している。その異様な静けさに、クラスメイトたちは何かが違うと感じていた。
放課後、タケルと親しかった主人公のカズキは、友人のヒロと一緒に猫屋敷を訪れることにした。彼らも噂を聞き、タケルが帰ってこないのは猫屋敷に行ったせいではないかと考えたのだ。
「本当に行くのかよ、怖くないか?」
「……でも、タケルが心配だ」
カズキとヒロは互いに顔を見合わせ、意を決して猫屋敷へと向かった。
猫屋敷での異変
夕暮れの猫屋敷は不気味な静寂に包まれていた。古びた木造建ての廃屋は、長年の風雨で色褪せ、窓ガラスはほとんど割れている。家全体がまるでこちらを見下ろしているかのように、不気味にそびえ立っていた。
二人は恐る恐る屋敷の窓から中を覗き込んだ。薄暗い屋敷の中には、あちこちに無数の猫が座り、じっと静かに佇んでいた。ところが、その猫たちはただの猫ではなかった。猫たちの視線は鋭く、まるで人間のようにこちらをじっと見つめ返してくる。
「ねえ、カズキ……なんか、あの猫たち、俺たちのこと見てないか?」
「うん……なんか、人間みたいだ」
彼らは息をひそめ、猫たちから目をそらせなくなっていた。猫たちは、まるで何かを知っているかのように、じっと二人を見つめている。その視線の冷たさに、二人は体を強張らせた。
その時、屋敷の奥の窓に誰かが立っているのが見えた。無表情でこちらを見ているその姿は――タケルだった。
「タケル……?」
しかし、タケルはまるで別人のように無表情で、じっとこちらを見つめているだけだった。二人は一目散にその場を逃げ出した。
別人のようなタケル
次の日、タケルが学校に現れた。しかし、その様子は以前とはまったく異なっていた。今までのタケルなら教室で騒ぎ、いたずらをし、クラスメイトを笑わせていたはずだが、その日は静かに座り、机に向かって真剣にノートを書いていた。
「タケル、お前どうしたんだよ?」
「勉強しているんだ。みんなと仲良くしたいし、真面目にやるよ」
その言葉に、クラスメイトたちは驚きを隠せなかった。かつてやんちゃで、仲間たちと騒ぐのが日課だったタケルが、まるで別人のように変わってしまったのだ。無邪気な笑顔は消え、代わりにどこか冷たさを感じさせる、落ち着いた表情がそこにはあった。
カズキはその変わりように背筋が寒くなったが、特に誰にも話すことはできなかった。
猫のように動くタケル
放課後、カズキはヒロと二人で教室で談笑していた。窓際に座って校庭を眺めていると、ふと校庭の片隅にタケルの姿が見えた。彼は一人で校庭の砂地にしゃがみ込み、何かに興味を示しているようだった。
「ねえ、あれタケルだよな?」
カズキが窓越しに指差すと、ヒロもその姿を目にした。しかし次の瞬間、二人の目の前でタケルが奇妙な動きを始めた。タケルは四つん這いになり、猫のように校庭を歩き出したのだ。小さく低い姿勢で、まるで何かを狙うかのように動いている。
「な……何してるんだ、タケル……」
カズキとヒロは言葉を失い、冷や汗が背中を流れた。タケルはまるで人間の意識が薄れ、猫にでもなったかのように、校庭を一匹の猫のように徘徊していた。
それ以来、タケルは「真面目で不思議なやつ」として学校で静かに過ごすようになったが、その背後にどこか猫の影を感じさせるような、得体の知れない雰囲気を漂わせていた。
カズキとヒロはもう猫屋敷の話をすることはなく、二度とその場所に近づくことはなかった。
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