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猫屋敷の視線 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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地元の子供たちの間では「猫屋敷」として知られている、古びた廃屋があった。木造の二階建てで、屋根は崩れかけ、壁にはところどころ穴が開いている。周囲には雑草が生い茂り、屋敷全体が不気味な雰囲気に包まれている。

猫屋敷と呼ばれる理由は、その名の通り、屋敷の中にたくさんの猫が棲みついているからだ。窓や玄関の隙間からも猫がじっとこちらを見ていることがあると噂になり、子供たちは怖がって近寄らなかった。しかし、小学生のケンタとタクヤは好奇心に駆られ、その日放課後に猫屋敷を訪れることにした。

屋敷の外からの視線

「本当に中に猫がたくさんいるのかな?」タクヤが震えた声で言う。

「見てみようぜ。大丈夫、外から見るだけだからさ」とケンタが言い、二人は草をかき分け、廃屋の窓にそっと近づいた。窓にはガラスが残っておらず、割れた木枠越しに屋敷の中が薄暗く見えた。

中を覗き込むと、屋敷の中はほこりだらけで、家具はボロボロに崩れかけている。しかし、そこには確かにたくさんの猫がいた。大きな猫、小さな猫、全身が真っ黒の猫、まだら模様の猫――どの猫も不気味なまでにじっと動かず、ケンタとタクヤのほうを見つめている。

「やばい……なんか変な感じがするよ」とタクヤが呟く。

不自然な猫たち

じっとこちらを見つめてくる猫たちの目には、普通の猫にはない、何か鋭い意識が感じられた。猫たちは、まるで二人が何をしに来たのかを知っているかのように見えた。屋敷の中で動いているのは猫だけで、人の気配は一切ない。

「ケンタ、あの猫たち……なんかおかしくないか?」タクヤが小声で尋ねる。

ケンタも答えられず、目をそらすことができないでいた。次の瞬間、猫たちのうちの数匹がゆっくりと立ち上がり、二人に向かってじりじりと歩み寄ってきた。

「おい、逃げるぞ!」

二人は慌ててその場から離れようとしたが、猫たちは足音も立てずに彼らの動きを見つめ続けていた。気味が悪くて走り出そうとしたその時、背後で「バサッ」と何かが倒れる音がした。

猫屋敷の秘密

二人は振り返り、屋敷の中を見ると、倒れた棚の影から何かが転がり出てきた。よく見ると、それは小さな骨のようなものだった。猫たちはその骨に集まり、まるでそれが何であるかを説明するかのように、二人に視線を向けてきた。

恐怖で体が動かないまま、二人はその場を凝視していた。猫たちがじっと動かずに彼らを見つめる目には、何かを伝えたい意図が込められているようだった。まるで、この屋敷に関する秘密を知り、二人に知らせようとしているかのように。

「ケンタ、あの猫たち……まるで見透かしているみたいだ……」

二人はようやく我に返り、猫の視線に背中を押されるようにして逃げ出した。振り返ると、猫たちは廃屋の窓からじっとこちらを見送っていた。その目はまるで、「二度と来るな」と言わんばかりに光っていた。

終わらない視線

家に帰ってからも、ケンタとタクヤは猫たちの視線を忘れることができなかった。あの鋭い眼差しと、屋敷に転がっていた骨の正体が頭から離れない。どうして猫たちは、まるで人間のような意識を持っているかのように、二人の様子を見透かしていたのだろうか。

その日以降、二人は二度と猫屋敷に近づかなくなったが、時折遠くから廃屋の窓を覗くと、いつも同じ場所で猫たちがじっとこちらを見ているのが見える気がした。



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