目次
山奥のリゾートバイト
大学生のアカリは、夏休みを利用して山奥にあるリゾートホテルでバイトを始めた。静かな山に囲まれたそのホテルは、観光客が訪れる名所から少し離れた場所にあり、穏やかな雰囲気とゆったりとした自然が楽しめると評判の場所だった。
初日、アカリがフロントで挨拶をしていると、少し離れたロビーの奥で鈴の音が鳴り響いた。チリン……チリンと澄んだ音が静かなロビーに漂い、アカリはその音に思わず振り返った。
「その音、なんですか?」
「ここは昔から、お守りのような鈴をたくさん置いているのよ。山奥だから、きっと誰かが見守ってくれているんでしょうね」
先輩スタッフは笑いながら説明し、アカリもそれを聞いて安心し、少し心が和らいだ。
夜の鈴の音
その夜、アカリは仕事を終えてスタッフルームで休んでいたが、窓の外からまたチリン……チリンという鈴の音が聞こえてきた。ロビーならまだしも、なぜこんな夜中に外から鈴の音が?
音が次第に近づき、まるで廊下を誰かが歩きながら、鈴を鳴らしているように感じられる。アカリは少し不安になり、音が聞こえる廊下の方へ向かってみた。
廊下を歩いても誰の姿も見えず、ただ鈴の音だけがひっそりと響いていた。気味が悪くなり、アカリは部屋に戻り、布団に潜り込んで目を閉じたが、遠くで鳴り続ける鈴の音がどうしても気になって眠れなかった。
不思議な来客
次の日、アカリはその鈴の音について先輩スタッフに尋ねたが、「ああ、山のお客さんが来てくれているのかもしれないね」とだけ言われ、詳しい説明はしてくれなかった。アカリは曖昧な答えに少し戸惑ったが、それ以上深く追及することはやめ、夜を迎えた。
その夜も、またチリン……チリンと鈴の音が聞こえてきた。音の主が気になりながらも、アカリはもう一度廊下へ出てみた。すると今度は、音のする方へ向かうたびに鈴の音が遠ざかり、まるで追いかけっこをしているように鈴の音が響く。
音を追ってロビーへたどり着いた時、鈴の音がピタリと止んだ。ロビーの片隅には、古びた和風の鈴が飾られていた。興味が湧き、手に取ろうとしたその瞬間、ふと誰かの温かい気配を感じた。
見守られている存在
鈴の音が止むと、どこか懐かしい気持ちに包まれ、アカリはまるで昔からそこに誰かがいるような不思議な安らぎを感じた。まるでおじいちゃんやおばあちゃんが、そっと見守ってくれているような優しさだった。
その後もアカリは何度か鈴の音を耳にしたが、その音が聞こえると妙に心が落ち着き、仕事で疲れている時にはかえってその音がありがたいもののように思えた。リゾートバイトの最後の日、アカリは小さく手を合わせ、鈴に向かって「ありがとうございました」と心の中で伝えた。
アカリはそれ以来、山のホテルで聞いた鈴の音が懐かしく思い出されるようになり、どこかで誰かが優しく見守ってくれていると信じていた。
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