怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

消えたブログの最後の投稿 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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仕事の合間、ふとしたきっかけで見つけたブログがある。なんとなく面白そうだと思い読み始めたが、読み進めるうちに、ページをめくる手が止まらなくなった。

そのブログは「Sの体験談」というタイトルで、更新頻度は毎晩決まって夜中の1時。書き手はSという名前を名乗る人物で、最近何かに追い詰められているようだった。最初は不思議なことが起きていると淡々と書かれていたが、次第にその内容は幽霊に関するものになり、Sが何か得体の知れない存在に追われている様子が日々詳しく書き綴られていくようになった。

日ごとに迫る幽霊の存在

ブログは初めこそ少し怖さを感じさせる内容だったが、日ごとにその不気味さが増していた。Sは、夜になると部屋の窓の外から誰かが自分を見つめている気がすると書き始め、次第にその視線が家の中に入ってきているかのような文章に変わっていった。

「昨晩、背後で足音が聞こえた。振り向いても誰もいない。それでも、何かが確実にそばにいるのを感じるんだ」

毎日のようにSの更新をチェックするようになった僕は、どうか無事でいてほしいと祈る気持ちでページをめくっていった。コメント欄には、「お祓いに行くべき」「霊媒師に頼んでみて」という助言や、励ましの言葉が溢れていた。しかし、Sはなぜかお祓いや助けを求めることに否定的で、ブログの更新でのみ自分の恐怖を吐き出していた。

徐々に追い詰められるS

投稿はさらに悪化していった。Sは次第に自分が眠れないほどに幽霊に追い詰められ、ついに食事も喉を通らなくなっていると記していた。

「昨日はついに、家中を巡って物音が聞こえた。幽霊が僕を探しているみたいなんだ。逃げ場がない」

その言葉には、生々しい恐怖がにじみ出ており、僕は読みながらも鳥肌が立つのを感じた。そして、コメント欄には、見ず知らずの読者からの応援や救いの言葉が続々と並んでいた。しかし、どれだけの言葉が届いても、Sの状況は悪化するばかりで、ついには「このブログを読む人に呪いが移るかもしれない」という警告までもが書き加えられるようになった。

最後の投稿

ついにSが「もう限界だ」と書いた夜、僕は不安と共にその更新を待った。そして夜中の1時、Sのブログが更新された。

「ここまで読んでくれたみんな、本当にありがとう。でも、もう無理みたいだ。今夜、ついにあいつが僕の目の前に現れた。姿は見えないが、気配が真横にいる。誰か、助けてくれ」

それがSの最後の投稿だった。その短い言葉には、もはや生への執着が感じられず、諦めのような雰囲気が漂っていた。そしてその日を境に、Sのブログはぱったりと更新が止まり、それ以上の新しい投稿は二度とされることがなかった。

追い詰められる読者

僕はSの無事を願いながら何度もブログを確認し続けたが、更新はなく、数日後にはブログ自体が消えてしまっていた。そして、気づくと自分の周りにも異変が起こり始めていた。夜中にふと目を覚ますと、視線を感じるようになったのだ。もしかすると、Sが言っていた「呪い」が僕の元にも届いてしまったのかもしれない。

今も僕は、誰もいないはずの部屋の中で、背後に感じる視線を振り払えずにいる。



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