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癒やしの鈴に関する日記 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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田中雄介は、書類整理をしていると、黄ばんだ日記を見つけた。その日記には「癒やしの鈴」と書かれたタイトルがあり、内容を少し確認すると、独り身の男性がある鈴について綴った記録のようだった。どこか疲れた雰囲気の文体が不思議と目を引き、雄介はその日記を読み始めた。

3月10日

今日、偶然骨董品店の前を通りがかった。店に引き寄せられるように入ってしまったが、自分でも何を買うつもりだったのか分からない。棚の上に、ややくすんだ小さな鈴が置かれていた。見た目は特に変わったものでもないが、何となくその鈴が気になり、気が付いたら手に取っていた。

店主は何も言わずに私を見ていたが、鈴を購入することに反対はしなかった。ただ、渡された時に「毎日その鈴の音を聞いてみるといいですよ」とだけ言われた。何だか不思議な気持ちで、私も何も考えずにうなずいてしまった。

3月12日

今日、帰宅後に買った鈴を取り出して、軽く鳴らしてみた。思った以上に澄んだ音が広がり、静かな部屋に心地良い音が響いた。音が鳴り終わったあとも、その余韻がしばらく頭に残る感じがする。こんな小さな鈴に癒やされるとは思わなかったが、気分が少し落ち着いた気がする。

3月15日

この数日、家に帰ってくると、つい鈴を鳴らしてしまう。仕事で疲れて帰ってきても、この音を聞くと心が静まる感じがするのだ。独り身の生活には何か空虚さがつきまとうが、この鈴の音を聞いていると、その空虚さが少しずつ埋められていくような気がしている。

今夜はいつもよりも多く鈴を鳴らした。部屋の中が、鈴の音で満たされるような錯覚に陥るが、なぜかその瞬間、部屋の隅に誰かがいるような気がして、少しだけ不安になった。

3月20日

今日も仕事で疲れ果てて帰宅したが、部屋に入り、鈴を鳴らした瞬間、疲れがスッと引いていくような感覚があった。こんなに小さなものに癒やされるとは思わなかったが、毎日の習慣になりつつある。

音を聞いていると、懐かしい気持ちがふと湧き上がる。昔、母が作ってくれた料理の香りや、祖父の家で遊んだ記憶がよみがえるのだ。もちろん、鈴とその記憶に関連性があるとは思えないが、この音を聞くたびに温かい気持ちになれるのは不思議だ。

3月25日

今日も鈴を鳴らした。この澄んだ音を聞くと、どんなに疲れていても心が癒されていくのが分かる。心が安らぐという表現がぴったりだ。仕事で嫌なことがあっても、家に帰ってこの音を聞くだけで心が軽くなる。

気付くと、鈴の音が部屋に響くと、ふと部屋の中が少し暖かく感じることが増えた。寒さが少し和らぐような、不思議な暖かさだ。もしかしたら、気のせいかもしれないが、この鈴には何か特別な力があるような気がしている。

3月30日

今日は帰宅後、しばらくの間、何度も鈴を鳴らしてしまった。仕事で大きなミスをしてしまい、どうにも気持ちが落ち込んでいたが、この音を聞いていると、心がほぐれていく。ふと気付くと、いつの間にか鈴の音に耳を傾けている自分がいる。

毎日聞いていると、鈴の音が以前よりも澄んでいるように感じる。まるで自分の心の中に直接響いてくるようだ。気のせいかもしれないが、この鈴が私に寄り添ってくれているような気さえしてくる。

4月2日

この鈴を鳴らす習慣が、完全に私の生活の一部となってしまった。どれだけ疲れて帰ってきても、この音を聞くだけで安らぎを感じる。孤独な日々が少しずつ和らぎ、誰かがそばにいてくれるような安心感がある。

最近は、この音を聞くと、微かな香りが漂ってくるような気がしている。どこか懐かしい香りだが、正確には思い出せない。ただ、非常に心地良く、自然と目を閉じてしまう。この鈴には、私の記憶の奥底に触れる力があるのかもしれない。

4月5日

今日も仕事で疲れたが、鈴の音に救われた。鳴らしているうちに、ふと「なぜこんなに癒やされるのだろう」と思った。骨董品店で偶然出会ったただの鈴なのに、これほど心が救われるとは、自分でも不思議でならない。

鈴を鳴らし、音が部屋に響くと、独りでいるはずなのに誰かがそばにいるような気持ちになる。この音が、私の寂しさを包み込んでくれているのかもしれない。まるで、見えない誰かが私の心に寄り添ってくれているような感覚だ。

4月10日

今ではこの鈴が手放せなくなってしまった。毎日鳴らしていると、鈴の音がどんどん美しく響くように感じる。まるで私と鈴が一体となり、共に癒やし合っているかのようだ。これまでの独りの生活が少しずつ温かさを帯び、心が穏やかになっていく。

今日もまた、鈴を鳴らして眠りについた。この鈴がある限り、私はもう孤独ではないのかもしれないと感じている。

日記を読み終えて

田中雄介は日記を閉じ、しばらく静かに考え込んだ。記載者は、ただの鈴に心の癒しを見出し、孤独な日々に寄り添って生きていたようだった。その音を聞くことで記憶の奥底が温かくなり、心が解きほぐされていった様子が、ありありと伝わってきた。

雄介は、日記を「癒やし・精神安定に関する書類」として棚に入れ、再び静かな書類整理に戻っていった。



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