喫茶店で私とリョウは今日もアキラの話を楽しみにしていた。彼が語る体験談には、いつも奇妙な現象と得体の知れない恐怖が伴っている。今日の話もまた、背筋がぞっとするような内容だった。
「今回の相談は、大学生の男性からだった。彼には年の離れた小学生の弟がいるんだが、その弟が手鏡に向かって“誰か”と話し始めたらしい。その話を聞いた時点で、俺はすでに嫌な予感がしていた。」
アキラはその時の相談内容を思い出しながら、話を続けた。
「その弟はある日、小さな鏡を手に入れてから、夜中にその鏡に向かって話すようになったらしい。最初は両親も、ただの遊びだろうとあまり気にしていなかったようだ。でも、相談してきた大学生の兄は違和感を覚えていた。弟はまるで友達に話しかけるかのように、鏡の中に向かって会話をしていたんだ。」
リョウが身を乗り出した。「その時点で、もうすでに普通じゃない感じだな。」
「ああ、彼も薄気味悪く感じていたらしいが、さらに事態は悪化していった。夜中だけではなく、日中でもその鏡に話しかけるようになり、しかも、弟の話し方がだんだん変わっていったんだ。まるで、他人に影響されているように、別の人間が話しているみたいだったそうだ。」
私は少し緊張しながら、続きを待った。
「そしてある日、兄が家の近くで奇妙な光景を目にした。弟が電柱に登ろうとしていたんだ。『何をしてるんだ!』と叫んで引き止めたら、弟は鏡を見せてこう言った。『この子が電柱の一番上から絶対にジャンプしたいって言ってるんだ』と。」
リョウも私もその話にぞっとして身震いした。
「その兄は恐怖を感じて、弟から鏡を無理やり取り上げて家に連れ戻した。だが、弟は見たこともない形相で『鏡を返せ!』と兄に怒鳴りつけたんだ。いつもは穏やかな子なのに、その日はまるで別人だったらしい。」
「それで、その兄は俺に連絡してきた。『この鏡をどうにかしてほしい』って。」
アキラは少し間を置いて続けた。
「俺が鏡を受け取ると、そこに異常な冷気を感じた。見た目は普通の手鏡で、割れてもいないし、古ぼけているわけでもない。でも、鏡をじっと見ていると、背後に人影が映り込むような気がするんだ。俺はすぐに、この鏡には『何か』が宿っていると確信した。」
「俺はその手鏡を手に入れると、知り合いの神職に相談し、しかるべき手順で鏡を供養することにした。その神社はこういう物の処理にも詳しいところで、持ち主の念がこもった物や、霊的な力が宿ってしまった物を安置できる場所だった。」
アキラはコーヒーを飲みながら、ふっと息をついた。
「供養が済んでから、しばらくしてからその大学生の兄から連絡があった。弟はすっかり元通りになっていて、鏡のことなど忘れたように過ごしているってな。俺もそれを聞いて安心したよ。」
「ただ、その鏡の中に誰がいたのか、そして何の目的で弟に近づいたのか…それは今でも謎のままだ。おそらく、その鏡がどこかの誰かと関わってきた中で、何かしらの執念や思念がこもってしまったんだろう。」
リョウが感慨深げに言った。「その鏡を最初に手に入れたのが間違いだったのかもな。」
「そうだな。でも、こういった不思議なものは気づかずに家に持ち込まれてしまうことがある。普通の鏡だったはずなのに、いつしか得体の知れない存在が宿り込んでいたのかもしれない。」
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