目次
失った親友
親友のユカが亡くなったのは、ちょうど1か月前だった。ユカとは高校時代からの親友で、何でも話し合える特別な存在だった。重い病にかかり、病室で何度も励ましたが、結局、彼女は帰らぬ人となった。
ユカのいない日常は、現実感が薄かった。朝起きては彼女にLINEを送りそうになり、居酒屋の前を通るたびに「あの席で飲んだな」と思い出していた。失った悲しみに浸るよりも、どこかぼんやりと生きていた。
届いたメッセージ
そんなある日、携帯に通知が届いた。画面を見ると、差出人はユカだった。
「今日の深夜0時、いつもの居酒屋で」
亡くなったはずのユカからのメッセージに、普通なら恐怖を感じるだろう。しかし、私はその時、不思議と気味悪さを感じなかった。それよりも、「もしかしてユカがまだどこかにいるのかもしれない」という思いが心を支配した。
約束の時間に私は居酒屋へ向かった。
不思議な再会
居酒屋に着き、ユカとの二人分の席をお願いすると、店員はいつも通りに案内してくれた。私はひとりでビールとつまみを注文し、ぼんやりとグラスを眺めていた。
そして、ふと目を上げると、目の前にユカが座っていた。
「ああ、久しぶり。遅くなってごめんね」
ユカは、まるで何事もなかったかのように微笑んでいた。普通なら驚くべきなのだろうが、その時の私は自然に「おう、遅かったじゃん」と返してしまった。
ユカは、店員を呼びビールを注文し、つまみを頼む。その様子は周囲の目にはどう映っているのだろうかと一瞬思ったが、店員も他の客も特に変わった様子を見せなかった。
私はユカに聞きたいことが山ほどあった。「なんでここにいるの?」「本当に死んだの?」と。しかし、なぜかそれらを口にしてはいけない気がして、ただたわいもない話を続けた。学生時代の思い出、好きだったドラマや映画の話、最近のニュース――内容は何でもよかった。ただユカと話せる時間が嬉しかった。
2時間ほど過ごすと、ユカは「またね」と軽く手を振り、自然に店を出ていった。
定期的なメッセージ
その不思議な出来事を誰にも話さないまま、私は日常に戻った。しかし、3か月後、またユカからメッセージが届いた。内容は前回と同じ。「今日の深夜0時、いつもの居酒屋で」。
私は今回も居酒屋へ向かった。前回と同じように、一人で飲み始めていると、いつの間にかユカが現れた。前回と同じように2時間、たわいない話をして別れた。
それから、3~4か月ごとにユカからメッセージが届き、居酒屋で再会するという不思議な生活が続いた。
5年後の私
そんな生活がもう5年になる。ユカとの居酒屋での再会は、私にとって特別なひとときだ。彼女は少しも変わらず、会うたびに元気そうな笑顔で迎えてくれる。
最近では、この「不思議な現象」について考えることも減った。ただ、当たり前のように彼女からのメッセージを待ち、会いに行く。それが日常の一部になっているのだ。
次の再会を待ちながら
そろそろユカからメッセージが届く頃だ。私は携帯を何度も確認してしまう。ユカと会えるのが待ち遠しい。
この不思議な体験を誰かに話すことはないだろう。それは私とユカだけの特別な時間だ。そして、どんな理由があろうと、私はそれを大切にしたいと思っている。
深夜0時、いつもの居酒屋でまた会えるのを楽しみにしている。
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