親友が亡くなって1か月。重い病で倒れ、あっという間に逝ってしまった。葬式に出席したのに、彼がいない生活にはまだ慣れない。笑い声が響かない日常は、どこか虚ろで現実味がない。
そんなある日、不意に携帯にメッセージが届いた。送信者は亡くなったはずの親友だった。
「今日の深夜0時、例の居酒屋で待ってる。」
普通なら気味が悪くなるだろう。しかし、不思議と怖くはなかった。むしろ、「親友がそこにいるなら行こう」と自然に思えた。現実がどこか遠く感じる日々だったせいかもしれない。
目次
初めての再会
夜中の居酒屋。親友とよく通っていた馴染みの店だ。店員に「二人で予約していた」と伝えると、何も疑問を持たれず、席へ案内された。
誰も座っていない対面の椅子に向かい、一人で酒とつまみを頼む。カウンターから漂う焼き鳥の香りに懐かしさを感じながら、ぼんやりと酒を飲んでいると、不意に目の前に親友が座っていた。
「よお、ひさしぶり。遅くなってごめんな。」
親友は、いつもと同じ気さくな笑顔だった。心臓が止まりそうになるほど驚いたが、その普通すぎる態度に、驚きも次第に薄れていった。
「……お前、本当にいるのか?」
そう尋ねようとしたが、なぜか口に出すのをためらった。親友は何事もなかったかのように「お前、元気にしてたか?」と話を始める。
その自然さに釣られるように、僕も日常のどうでもいい話を返していった。しばらくすると、親友は店員に酒とつまみを注文し、普通に受け取っている。その光景を見て、ますます「本当に亡くなったのか?」という疑問が頭をよぎったが、聞く勇気は出なかった。
2時間ほど、ただただ笑い合い、他愛のない話をして解散となった。
繰り返される再会
それから数か月後、また親友からメッセージが届いた。内容は前回と同じ。「例の居酒屋で待ってる」。
前回と同じように僕が先に店に入り、酒を飲みながら待つ。ふと気づくと親友が目の前に座っていた。やはり話題は特に深いものではない。くだらない話、どうでもいい冗談、過去の思い出話――けれど、それが妙に楽しい。
2時間ほどして自然に解散する。そんな不思議な「再会」は、3か月から4か月に一度のペースで繰り返されるようになり、もう5年になる。
居酒屋で会える親友
親友からの連絡が来るたび、僕は迷うことなく居酒屋へ向かう。彼との会話は少しも変わらないし、特に不思議なことを追及する気にもならない。ただ、この時間が愛おしく、失いたくないとさえ思うようになった。
5年が過ぎた今、親友が亡くなっていた事実はもはや遠い記憶のように感じる。現実なのか幻なのか、そんなことはもうどうでもいい。
次のメッセージが届くのは、そろそろだろう。僕はまた居酒屋で、親友と再会するだろう。二人で笑い合い、どうでもいい話をして、2時間ほど過ごす――そして、きっとまたいつものように解散する。
それがこの先も続いていくなら、それでいい。僕はそう思っている。
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