目次
久しぶりのドライブ
社会人になり、忙しい毎日を過ごしていた私と親友のタカシ。学生時代のように自由な時間は減り、二人で過ごす機会も少なくなっていた。そんな中、タカシが突然、「久しぶりにドライブでも行こう」と誘ってくれた。
行き先は、昔二人でよく訪れた湖。静かな湖畔とその周囲の自然が好きで、大学時代には何度も足を運んだ場所だった。
湖畔の静寂
その日は快晴で、車の窓から入る風が心地よかった。学生時代を懐かしみながら車を走らせ、湖畔へ到着したのは午後4時頃。夕陽が湖面に反射し、金色に輝いている様子は言葉にならない美しさだった。
「やっぱりいいな、ここ。落ち着くよな」
タカシはそう言いながら車を停め、私たちは湖畔の近くに腰を下ろした。話す内容は他愛もないものだったが、それが心地よかった。
湖の秘密
ふとタカシが言った。
「そういえば、この湖には秘密があるって聞いたことある?」
「秘密?」
「うん。この湖は時間の流れが違うって話。昔、ここで時間を忘れて一晩中過ごした人が、帰ったら数日経ってたとか、逆にほんの数分しかいなかったのに数時間過ぎてたとかさ」
私はその話を笑い飛ばした。「まさか。そんなの都市伝説だろ」
しかし、タカシはどこか楽しそうに微笑みながら、「まあ、信じるか信じないかは自由だけどさ」と肩をすくめた。
不思議な出来事
湖畔でのんびりと過ごしていると、ふいに風が止み、湖面が鏡のように静まり返った。その瞬間、湖の水がほんの少し揺れ、まるで何かが呼吸をしているかのように感じた。
「今、何か見えた?」タカシが言う。
「え?」
「ほら、湖の向こう、何か動いてないか?」
言われて湖の中央を見つめると、微かに揺れる水面の中に、人影のようなものが見えた。ぼんやりとしていてよく分からなかったが、確かに何かがいた気がする。
時間の魔法
それからどれくらい話していただろうか。気づけばあたりは夕焼けから夜に変わり、星が輝き始めていた。
「そろそろ帰るか」とタカシが言い、私たちは車に乗り込んだ。しかし、スマホを確認した私は驚愕した。湖に到着したのは午後4時だったはずなのに、時計はまだ午後5時を指していた。
「おかしいな、こんなにゆっくりしてたのに……時間が進んでない?」
タカシは少し驚いた様子だったが、「ほら、言っただろ? ここは時間が違うんだよ」と笑った。
帰り道の余韻
帰り道、私たちはその出来事について深くは話さなかった。けれど、どこか心が温かくなるような、不思議な体験だった。
「また来ような、この湖に」
「そうだな。また行こう」
タカシの笑顔とともに、心地よい疲れが体を包み込んだ。あの湖の秘密は、私たちだけが知っている特別なものになった気がした。
それ以来、湖の記憶はいつも心を穏やかにしてくれるものになった。そして、時間の魔法のような出来事を思い出すたび、私はまたタカシと一緒にあの湖を訪れたいと思うのだった。
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