目次
夜の公園
小学生のユウタは、学校でも家でも心が落ち着かない日々を過ごしていた。両親は共働きで夜遅くまで帰ってこないし、学校では勉強についていけず、クラスメイトとも馴染めなかった。
その日も、ユウタは眠れずにベッドから抜け出し、夜の公園へ向かった。家の近くにある小さな公園は昼間は子供たちで賑わうが、夜は静まり返っている。ユウタはその静けさが好きだった。
公園の奥のお地蔵様
公園の奥に、古びたお地蔵様があるのをユウタは知っていた。大人たちは「あのお地蔵様は昔からある大事なものだから、粗末にしちゃいけない」と話していたが、子供たちの間では「あそこに近づくと呪われる」という噂があった。
ユウタはそんな話を信じていなかった。むしろ、そのお地蔵様を見ると、どこか安心する気持ちになっていた。
その夜も、公園のベンチに座り、ぼんやりとお地蔵様の方を眺めていると、ふと耳元で猫の鳴き声が聞こえた。
「ニャー……」
奇妙な猫の声
ユウタは周囲を見回したが、公園には猫の姿が見当たらない。
「どこにいるんだろう……」
再び鳴き声が聞こえた。今度は少し近い。
「ニャー……ニャー……」
その声に誘われるように、ユウタはお地蔵様の方へ歩き出した。
お地蔵様と猫たち
お地蔵様の前に着くと、そこには何匹もの猫が座っていた。黒猫、白猫、三毛猫――様々な猫たちが静かにお地蔵様を囲むように座っている。
ユウタは驚きながらも、「猫がこんなに集まっているなんて」と少しだけ微笑んだ。しかし、その猫たちの目が全員一斉にユウタを見つめた瞬間、背筋が冷たくなった。
猫たちは一言も鳴かない。ただ、全員がユウタをじっと見ている。
「……どうしたの?」
ユウタがそう呟いた瞬間、猫たちの中の一匹が低く唸るように鳴き声を上げた。
「ニャー……」
それを合図にしたかのように、他の猫たちも一斉に鳴き始めた。
「ニャー……ニャー……ニャー……」
その声は次第に大きくなり、耳を覆いたくなるほどだった。
動き出すお地蔵様
ユウタは怖くなり、後ずさりした。その時、目の前のお地蔵様が微かに動いたように見えた。
「え……?」
お地蔵様の顔がほんの少しこちらを向き、その口元がかすかに動いたように感じた。
そして、猫たちの鳴き声が止んだ。公園は再び静寂に包まれた。
ユウタは震えながらお地蔵様を見つめていたが、何も起こらない。ただ、周りの猫たちはいつの間にか姿を消していた。
帰り道
ユウタは急いでその場を離れ、家へと走った。途中で何度も後ろを振り返ったが、誰もいないし、猫の姿もなかった。
「夢だったのかな……」
そう自分に言い聞かせながら布団に潜り込んだが、翌朝まで一睡もできなかった。
後日談
それ以来、ユウタは公園には近づかなくなった。しかし、ある日学校帰りに公園の前を通りかかると、子供たちが「あのお地蔵様が突然綺麗になった」と話しているのを耳にした。
気になってこっそり公園の奥へ行くと、お地蔵様は確かにピカピカに磨かれ、周囲に花やお供え物が置かれていた。
その瞬間、耳元でふと声が聞こえた。
「ニャー……」
振り返ると、そこには一匹の黒猫が座っており、じっとユウタを見つめていた。
ユウタは足早にその場を立ち去ったが、その黒猫の目が、どこかお地蔵様と似ているような気がしてならなかった――。
ユウタは二度と深夜の公園へ行くことはなかった。だが、お地蔵様と猫たちの視線は、今でも彼の記憶に焼き付いている。
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