数年前の話です。私は、古い家具が並ぶアンティークショップで一脚の揺り椅子を見つけました。どっしりとした木製のフレームと滑らかなアームレスト、座面には年季を感じる革張り。何とも言えない魅力があり、衝動的に購入してしまいました。
家に持ち帰ると、リビングの窓際にその椅子を置きました。朝には日差しが当たり、夜には穏やかなランプの光に照らされる。完璧なインテリアだと思っていました。
目次
静かに揺れる椅子
ある夜のことです。ソファで映画を見ていると、ふと視界の隅で揺り椅子がわずかに動いていることに気づきました。最初は「風が入ったのだろう」と思いましたが、窓は閉まっています。妙に気味が悪くなり、映画も途中でやめて寝室へ向かいました。
翌朝、リビングに戻ると、椅子は静かにそこにありました。揺れてはいません。気のせいだったのかもしれない、と自分に言い聞かせ、普段通りに過ごしました。
深夜の物音
しかし、数日後の深夜、また異変が起きました。寝室で寝ていると、リビングからカタ…カタ…という微かな音が聞こえてきました。揺り椅子が揺れる音です。布団をかぶって気にしないようにしましたが、音はやむどころか次第に速くなっていくのです。
恐る恐るリビングに行くと、椅子は止まっていました。しかし、その時感じたのは、そこに誰かが「座っているかのような」圧迫感でした。空っぽの椅子を見ているはずなのに、まるで何かがこちらを見返しているような感覚。鳥肌が立ち、その場を離れました。
座るべきではなかった
その夜から、椅子は時々勝手に揺れるようになりました。昼間でもふと見ると、誰も触れていないのに静かに揺れているのです。最初は怖かったものの、次第に慣れてしまい、気にしないようにしました。
しかし、ある日、友人が遊びに来たとき、何気なくその椅子に座った瞬間、友人が突然叫び声を上げました。「何かが後ろにいる!」と青ざめた顔で飛び上がったのです。後ろを見ても何もいませんでしたが、友人はそれ以降、私の家には二度と来ませんでした。
消えた椅子
それから数週間後のことです。私は家を空ける予定があり、旅行から帰ってくると驚くべきことが起きていました。リビングの窓際に置いていた揺り椅子が跡形もなく消えていたのです。鍵はかけていましたし、誰かが侵入した形跡もありません。
ただ、床には微かに擦れた跡が残っていました。それは椅子が勝手にどこかへ動いていったかのように、窓際から部屋の奥へ向かう線を描いていました。そしてその跡は、ぴたりとリビングのクローゼットの前で止まっていたのです。
怖くなり、私はすぐに家を引き払い、引っ越すことにしました。それ以来、その揺り椅子のことを考えないようにしています。ただ時折、静かな夜に聞こえるカタ…カタ…という音が、今も耳から離れません。
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