怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

アンティーク家具の呪縛 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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古い物が好きな僕は、骨董品店巡りが趣味だった。その日は、駅前の古びた骨董品店に立ち寄り、ふと目に留まったアンティークの椅子を購入した。

それは、彫刻が美しく施された木製の椅子で、見る人を圧倒するような存在感を持っていた。椅子の背もたれには翼のある天使のような彫刻が施され、どこか荘厳な雰囲気さえ漂っている。

価格も手ごろだったため、迷わず購入し、自宅のリビングに置くことにした。

椅子の違和感

その椅子を部屋に置いた瞬間、リビングの空気が少し重くなった気がした。気のせいかもしれないと思いつつ、椅子を眺めながらコーヒーを飲んで過ごす。

しかし、その夜から奇妙な出来事が起こり始めた。

深夜、リビングから微かな「ミシ……ミシ……」という音が聞こえる。古い家具だから木がきしむのは仕方ない、そう自分に言い聞かせた。

だが、音が規則的に繰り返され、まるで誰かが椅子に座っているかのように感じられた。

奇妙な夢

その椅子を置いてから数日後、奇妙な夢を見るようになった。

夢の中では、リビングの椅子に見知らぬ女性が座っている。青白い肌に、古びたドレスをまとったその女性は、じっとこちらを見つめていた。

「この椅子は、私のものよ……」

囁くような声が耳に残り、僕は飛び起きた。

「夢だよな……ただの夢だよな……」

胸の鼓動が激しくなる中、リビングを確認しに行く。椅子はそこにあり、特に変わった様子はなかった。ただ、なぜか椅子の周りの空気が冷たく感じられた。

椅子の異変

それからというもの、椅子に近づくのが怖くなり、リビングで過ごす時間が減った。しかし、夜になるとリビングから奇妙な音が聞こえるようになった。

「ミシ……ミシ……」

ある夜、思い切って椅子を確認すると、座面に薄っすらと人が座ったような跡がついていた。

「誰が……?」

自分以外の誰かがこの椅子に座った形跡――そう思った瞬間、視界の端に何かが動いた気がして振り返った。しかし、そこには誰もいない。

椅子の由来

怖くなった僕は、行きつけの別の骨董品店に行き相談をしてみた。店主に話すと、店主は少し驚いた表情を浮かべた。

「あの椅子を買ったのかい……?」

話を聞くと、その椅子は以前、大きな屋敷で使われていたもので、そこで亡くなった女性の持ち物だったという。その女性は屋敷で孤独な最期を遂げ、屋敷が取り壊される際に家具が処分されたらしい。

「何か感じたなら、すぐに手放したほうがいいよ。あれは……持ち主がいる家具だからね」

最後の夜

その夜、椅子を手放す決心をした。

しかし、その決断をした夜、最も恐ろしい体験をした。深夜、リビングから大きな音が響き、目を覚ました。

「バタン!」

椅子が倒れる音だった。恐る恐るリビングを確認すると、椅子が床に倒れており、その背もたれに刻まれた天使の彫刻が妙に歪んで見えた。

ふと、椅子の上に青白い手がかすかに見えた気がして、僕は全速力でその場を離れた。

手放した後

翌日、椅子を骨董品店に返しに行った。それ以来、夢も音も消え、平穏な日々が戻った。

だが、時折家具店の前を通ると、あの椅子がガラス越しに僕を見つめているような気がする。そして、どこからともなく聞こえる声が耳に残る。

「この椅子は、私のものよ……」



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