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古民家の夜――不気味な声の正体 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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古いものが好きな私は、ネットで見つけた古民家を改築した貸家に一泊旅行することにした。写真で見たその家は、古い趣を残しつつも改装されており、快適そうだった。田舎の静かな環境も、都会の喧騒から離れるにはちょうど良いと思った。

到着してみると、写真以上に素敵だった。柱や天井の梁は歴史を感じさせる風合いが残りつつも、畳やキッチンなどは新しくリフォームされており、快適そのものだ。縁側から見える庭も手入れが行き届いており、風が木々を揺らす音が心地よかった。

「ここにして正解だったなぁ…」

旅行気分に浸りながら、ゆっくりと夕飯を楽しみ、お風呂で疲れを癒すと、布団に入った。しかし、旅先特有の高揚感のせいか、どうにも眠れない。布団の中でゴロゴロと寝返りを打ちながら、静まり返った古民家の夜を感じていた。

しばらくすると――

「カ…ッ、オァ……ェェェ……」

外から妙な音が聞こえてきた。

一瞬、風が木々を揺らしているのかと思ったが、どうも違う。それは人の声のように聞こえたが、明らかに言葉として成り立っていない。ただの音の羅列のような、不気味で耳障りな響きだった。

「……何だ?」

私は布団の中で体を起こし、耳を澄ました。再びその声が聞こえる。

「オァ……カァ……ェェェ……」

声は低く、かすれた音で、近づいたり遠ざかったりするように聞こえた。不安が胸をよぎったが、好奇心がそれに勝った。

「外で誰かが何かしてるのか?」

そう思った私は、懐中電灯を手に取り、そっと玄関を開けて外に出た。

外は静まり返り、月明かりが庭を淡く照らしている。どこかから虫の声がかすかに聞こえるだけで、人の気配はない。だが、あの声は確かに聞こえた。私は縁側に立ち、再び耳を澄ます。

「カァ…ッ、オァ……」

声は庭の奥から聞こえる。私は足を引きずるようにゆっくりと音の方に近づいた。懐中電灯を頼りに庭を照らしながら、声の主を探す。

そして、庭の端――石灯籠のそばに、その姿を見つけた。

そこには、人間の形をした何かが立っていた。

いや、見た目は確かに人間だ。しかし、その顔には明らかに生気が感じられない。月明かりの下で見えたその顔は、焦点の合わないガラス玉のような目をしており、口元には無理やり作られたような引きつった笑顔が浮かんでいる。

「……!」

私は恐怖で声が出なかった。彼――いや、それは、じっとこちらを見つめていた。

「ォォ……カァ……オァ……」

再び、意味を成さない音がその口から漏れた。まるで人間の言葉を真似しているようだが、何かが決定的に間違っている。

「な…なんだ…こいつ…?」

その場から動けずにいると、それがゆっくりと一歩、こちらに近づいてきた。そのぎこちない動きは、まるで操り人形のようだった。私は背筋が凍りつき、後ずさった。

「近づくな…!」

必死に懐中電灯を向けたが、それは全く怯むことなく、ただこちらを見つめたままだった。

「ォ……カァ……ェェェ……」

その声が耳に響き、体中の毛が逆立つ感覚を覚えた。その時――

「こんなところに紛れ込んでしまったのか…」

低い声が背後から聞こえた。振り向くと、制服を着た警察官のような男性が立っていた。彼は私を見てため息をつき、ゆっくりと近づいてきた。

「ここは君がいるべき場所じゃない。もう、来ちゃダメだよ。」

その言葉を聞いた瞬間、視界がぼやけ、意識が遠のいた。

気がつくと、私は布団の中にいた。朝の光が障子越しに差し込み、いつもの古民家の穏やかな空気が漂っている。

「夢…だったのか…?」

だが、あの声と無表情な笑顔は、今でも鮮明に頭にこびりついている。恐る恐る庭を確認してみたが、そこには何の異常もなかった。ただ、石灯籠の前に、誰かが立っていたような痕跡だけが残されていた。

「あれは…なんだったんだ…?」

私はその場に立ち尽くし、背中を冷たい汗が流れるのを感じた。



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