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レンタルビデオ店にだけ並ぶ「借りられない棚」 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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プロローグ

20年前、個人経営のレンタルビデオ店はどこにでもあった。家族連れや若者たちが映画を探しに訪れる、どこか懐かしい場所。しかし、どの町にも一つは奇妙な噂が立つ店があった。この話は、そんな一軒の店にまつわる不思議な出来事だ。

本文

主人公の英司(えいじ)は大学生で、駅前にある小さなレンタルビデオ店「シネマコレクション」でアルバイトをしていた。店内には古い映画やB級作品が所狭しと並び、どこか雑然としていたが、それが常連客には心地よかった。

ある日、英司は店主からこう言われた。

「棚の整理を頼むよ。でも、奥の“借りられない棚”には手を出さないようにな。」

英司は「借りられない棚」という言葉に引っかかった。店内を見渡すと、店の隅にひっそりと置かれた古びた棚があった。他の棚と違って、そこに並ぶビデオには薄い埃が積もり、誰も触れた形跡がなかった。

興味をそそられた英司は、閉店後にその棚をこっそり確認することにした。

不思議なタイトル

その棚には、一風変わったタイトルのビデオが並んでいた。例えば、

「戻れない夜」
「振り返るドア」
「最後の観客」
どれも見たことのないタイトルで、パッケージには内容の説明が一切書かれていなかった。さらに奇妙なのは、店のレンタルリストにはこれらの作品が登録されていないということだった。

英司はますます興味を抱き、好奇心に負けて1本を手に取った。それは「見続ける部屋」というタイトルだった。

英司がパッケージを開けると、ビデオテープには何もラベルが貼られていない。ただ、ケースの内側には手書きのメモがあった。

「再生しないで」

見てはいけないもの

その晩、英司はどうしてもそのビデオが気になり、自宅で再生してみることにした。テープをセットし、再生ボタンを押すと、画面には薄暗い部屋の映像が映し出された。

部屋の中には、一人の男が背中を向けて座っていた。無言で何かを見つめている。その背中には異様な緊張感が漂い、英司は思わず息を飲んだ。

やがて男がゆっくりと振り向いた。

その顔はどこか見覚えがあった――それは英司自身の顔だった。

驚きで手を震わせながらも映像を止めようとしたが、停止ボタンが効かない。画面の中の英司は、どこか暗い表情でカメラに向かってこう囁いた。

「次は君の番だ。」

その瞬間、画面が真っ暗になった。

店主の告白

翌日、英司は「シネマコレクション」に向かい、昨夜の出来事を店主に話した。店主はしばらく無言だったが、やがて深いため息をついて言った。

「だから“借りられない棚”には手を出すなと言ったんだよ。」

店主の話によると、その棚のビデオは数十年前、前の店主がどこかから持ち込んだものらしい。それらを借りた人々は皆、不思議な体験をしたと話し、二度とそのビデオに近づかなくなったという。

「返却されても、それらはどうしても消えないんだ。何度捨てても、翌日には棚に戻っている。」

店主は英司に、見たビデオはもう二度と触らないようにと忠告した。英司もそれ以上深く関わるつもりはなかった。

結末

その後、英司はそのビデオに近づくことはなかった。しかし、「借りられない棚」の存在は常に彼の頭に残り続けた。

大学を卒業した後、英司が再びその店を訪れたとき、店は既に閉店していた。しかし店先には、あの「借りられない棚」と見覚えのあるビデオが無造作に置かれていた。

そしてその中には、「見続ける部屋」がきちんと並んでいた――新品同様の姿で。



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