目次
出会いのきっかけ
ミホは、最近仕事に追われ、心に余裕を失いかけていた。朝から夜遅くまで働き、帰宅してもスマホを眺めて時間を潰すだけの日々。
そんなある日、何気なくスマホをいじっていると、突然見覚えのないアプリがインストールされていることに気づいた。
アプリの名前は「ひとこと便り」。アイコンは小さな封筒のイラストだった。
「……いつの間に入れたんだろう?」
興味を惹かれてアプリを開いてみると、画面には一言だけ書かれていた。
「今日もお疲れさま。」
シンプルな言葉だったが、ミホはそれだけで少しだけ気持ちが軽くなるのを感じた。
毎日のひとこと
次の日も、スマホを開くとアプリから通知が来ていた。
「雨が降りそうだから傘を忘れないでね。」
「あれ、今日雨だったっけ?」
そう思いながら天気予報を見ると、本当に午後から雨の予報になっていた。
それからというもの、アプリは毎日、何かしらの「ひとこと」を届けてくれるようになった。
「今日は大変だったね、よく頑張ったね。」
「たまには好きなものを食べてリフレッシュしよう。」
「昨日よりも少しだけ早く帰れるといいね。」
ミホはこのアプリがどこから来たのか不思議に思いながらも、毎日の通知が楽しみになっていた。
特別な言葉
ある日、ミホは仕事で大きなミスをしてしまい、上司に叱られて落ち込んでいた。家に帰る足取りも重く、何をする気にもなれなかった。
スマホを見る気力もなくベッドに横たわっていたが、不意にアプリから通知音が鳴った。
「……また、何か言ってくれるのかな。」
ミホはスマホを手に取り、画面を開いた。
「人は誰でも間違えるよ。でも、その一歩が次の成長につながるから大丈夫。」
そのメッセージを読んだ瞬間、ミホは涙が止まらなくなった。誰かに優しく背中を押してもらった気がして、心がじんわりと温かくなったのだ。
不思議な機能
ある日、ミホはアプリをもっと知りたくなって、設定画面を開いてみた。しかし、そこには特に特別な機能や情報はなく、ただ一つ、「過去の言葉を見る」というボタンがあるだけだった。
そのボタンを押してみると、今までアプリが送ってくれた言葉が一覧になって表示された。その中には、ミホが見覚えのないメッセージも混じっていた。
「小さい頃、公園で走り回るのが好きだったね。」
「初めて料理を作ったときのこと、覚えてる?」
どれもミホの記憶にある情景だった。
「これ……私のことを知ってるの?」
アプリが自分の心に寄り添っているような気がして、不思議な安心感が湧いてきた。
最後のひとこと
それからも、アプリは毎日、優しい言葉を届けてくれた。
しかし、ある日突然、通知が来なくなった。アプリを開こうとしても、画面には「このアプリは利用できません」と表示されるだけ。
「あんなに毎日言葉をくれてたのに……どうして?」
失くして初めて、その存在の大きさに気づいたミホだったが、通知が来ない日々の中でふと気づいたことがあった。
アプリがくれていた言葉が、ミホの心の中にしっかりと残っていることに。
「きっと、これからも頑張れるよ。」
そう思いながら、ミホは前を向いて歩き出した。
小さな変化
それ以来、ミホは時々スマホを眺めて、あのアプリを思い出すようになった。
そして気づいた。どこかで見かけた「ありがとう」の言葉や、ふと耳にした優しい言葉が、自分にとっての新しい「ひとこと便り」になっていることに。
あのアプリは、ミホに「心に寄り添う大切さ」を教えてくれたのだ。
それがどこから来たものなのか、ミホはもう追求しない。ただ、あのアプリに感謝している。
「本当にありがとう。」
そう呟きながら、ミホは静かにスマホの画面を閉じた。
あなたのスマホにも、ひょっとしたらこんなアプリが入っているかもしれない。気づくのはいつの日か――それは、あなたの心が疲れた時なのかもしれない。
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