怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

山のからの不気味な泣き声 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私は小さいころ、田舎の静かな村で暮らしていました。家の周りは山に囲まれ、10分も歩けばすぐ山の中に入れるような場所でした。自然豊かで美しい場所ではありましたが、子ども心にその山はどこか怖くもありました。

特に、山の中腹にある洞穴については、幼い頃から祖父に散々言い聞かされていました。

「洞穴には化け物が住んでいるから、絶対に近づくな」

祖父は真剣な顔でそう話していました。いまなら「子どもが危険な場所に行かないように怖がらせていただけだろう」と思えますが、当時の私は祖父の話を本気で信じていました。祖父が話す化け物の伝説には妙な迫力があったのです。

夜道で聞いた恐ろしい声

ある日、祖父に連れられて夜道を歩くことがありました。村の近所に用事があって、その帰り道だったと思います。あたりはすっかり暗くなり、懐中電灯の光が足元を頼りなく照らしていました。

歩いていると、ふいに森の奥から奇妙な音が聞こえたのです。

「ぎぃぎぃぎぃーーー」

それは、何とも言えない不快で耳障りな音でした。まるで金属が軋むような、あるいは動物の叫び声がねじ曲がったような――説明のつかない音です。

私は思わず足を止め、祖父を見上げました。祖父もその音に気づいたらしく、険しい顔で森の方をじっと見つめていました。

「……山の化け物だ」

祖父の低い声に、背筋が凍る思いがしました。

化け物の話

祖父はその場で静かに語り始めました。

「あの洞穴には昔から化け物が住んでいると言われているんだ。普段は洞穴の奥で静かにしているが、夜になると時々森に出てきて、声を上げるんだよ」

私は震え上がりながら、森の暗がりを見つめました。懐中電灯の光が届く範囲には何もいません。しかし、まるでその声の主がこちらをじっと見つめているような感覚がしました。

祖父は僕の肩をしっかり掴み、「急いで帰るぞ」と言いました。

化け物だったのか

家に帰ってからも、あの「ぎぃぎぃぎぃーーー」という音が頭から離れませんでした。あれは何だったのか――祖父が言うように本当に化け物だったのか。

今になって思えば、山の動物――たとえば鹿や鳥の鳴き声が、奇妙に響いただけだったのかもしれません。しかし、あの声を聞いた瞬間の恐怖は、動物の声では説明がつかないような気もします。

それに、祖父があの時見せた真剣な表情――あれがすべて冗談だったとはどうしても思えません。

あの日から

私はもう大人になり、あの村を離れています。それでも時々、夜に山の中を歩く夢を見ることがあります。そして、夢の中で必ずあの声が聞こえてくるのです。

「ぎぃぎぃぎぃーーー」

目が覚めると、子どもの頃の記憶が鮮明に蘇り、今でも心の底に染み付いた恐怖を思い出します。

あの洞穴には何かがいる――祖父の話は嘘ではないと、私は今でも信じています。



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