目次
出張先での日課
タカオは地方都市に2週間の長期出張中だった。普段は東京で忙しく働いている彼にとって、地方での出張は少し特別な時間だ。
仕事の後、ホテルに戻るだけでは退屈なので、夕方にはふらっと周辺を散歩するのが日課になっていた。
出張先は自然が多く、住宅街の合間に緑の小道や広場が点在している。歩くたびに新しい発見があり、タカオは散歩を楽しむようになっていた。
見つけた不思議な公園
ある日の夕方、いつもと違うルートを歩いてみると、細い道を抜けた先に小さな公園があった。
ブランコや砂場がある昔ながらの公園で、誰もいない静かな場所だった。公園の中央には特徴的な時計台が立っており、時間が止まったように針が動いていない。
「なんだ、ここ?」
どこか懐かしい雰囲気に惹かれてタカオは足を踏み入れた。
公園の異変
ベンチに座って一息ついていると、周囲の空気が変わるのを感じた。風が止み、街の喧騒も消えている。
「……静かすぎるな。」
不思議に思って立ち上がると、公園の時計台が急にカチ、カチ、カチ……と音を立てて動き始めた。
驚いて時計を見上げると、針が一周するたびに周囲の景色が少しずつ変わっていることに気づいた。
過去と未来の公園
最初は普通の夕方の公園だったのに、次に見た時には、子供たちが遊ぶ賑やかな風景に変わっていた。
「えっ、これ……いつの時代?」
そしてさらに時計が回ると、公園は荒れ果て、草木が伸び放題の状態に変わった。壊れたブランコやひび割れた砂場――時間が未来に飛んだように思えた。
タカオはその場に立ち尽くし、目の前で移り変わる風景をただ見ていた。
公園の住人
「迷い込んだね。」
背後から声がして振り向くと、そこには老人が立っていた。どこから現れたのかわからないが、その表情は穏やかだった。
「この公園、時間が流れる場所なんだ。過去も未来も見せてくれるけど、戻れるのは今だけ。」
「……どういうことですか?」
タカオが尋ねると、老人は微笑んで時計台を指差した。
「君がこの公園で見たものは、全部君が持っている可能性だよ。どんな未来が待っているか、それを決めるのは君自身だ。」
時計の終わり
時計の針が再び動き出すと、景色は元の静かな公園に戻った。老人の姿も消えていた。
「夢……だったのか?」
そう思いながら公園を後にしたが、足元に何かが落ちているのに気づいた。拾い上げると、それは古びた腕時計だった。
その時計は、タカオが幼い頃に大切にしていたものとそっくりだった。
公園が消える
翌日、タカオは公園をもう一度訪れようとしたが、何度探しても見つからなかった。
地元の人に尋ねても、「そんな場所は知らない」と言われるだけだった。
不思議な体験を胸に、タカオはその後も出張先での仕事をこなしたが、あの公園のことを忘れることはなかった。
「あの時計台の針が動いて見せてくれた未来……あれは本当に可能性だったのかもしれない。」
彼はその日以来、自分の時間をもっと大切に生きようと思うようになった。
「あなたの街にも、そんな不思議な場所があるかもしれません。少し足を伸ばして探してみてはいかがでしょうか?」
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