目次
プロローグ
長期出張の楽しみといえば、普段の生活では味わえない新しい街の空気や風景。主人公の洋介(ようすけ)は、出張先での仕事が終わると、毎晩のようにホテル周辺を散歩するのが日課になっていた。しかし、ある夜、散歩中に出くわした奇妙な路地をきっかけに、不思議な出来事に巻き込まれることになる――。
本文
洋介は地方都市での2週間の出張を命じられ、古びたビジネスホテルに滞在していた。最初の数日は仕事の疲れで部屋に直帰していたが、数日経つと体が慣れ、仕事後の散歩が日課となった。
出張先の街は、小さな商店街や古い住宅街が広がる静かな場所で、夜になるとほとんど人気がなくなる。しかしその静けさが、仕事で疲れた洋介には心地よかった。
ある夜、散歩中にふと目に留まったのは、一本の細い路地だった。路地の入口には古びた提灯がぶら下がり、明かりが薄暗く揺れている。その先には何軒かの古い木造家屋が見え、どこか懐かしい風景が広がっていた。
「こんなところあったかな?」
気になった洋介はその路地に足を踏み入れた。
不思議な風景
路地の奥には、昔ながらの小さな居酒屋や古道具屋が並び、どこか昭和の雰囲気を感じさせた。道端には子どもたちが遊んだような古びた縄跳びやビー玉が落ちており、誰かの生活感が漂っている。
洋介は「こんな時代を感じさせる場所がまだ残っているんだな」と驚きつつも、その雰囲気を楽しみながら路地を歩き回った。しかし、不思議なことに、その夜の散歩の間、誰ともすれ違うことはなかった。
翌日も仕事を終えた洋介は、その路地が気になり、再び訪れてみた。しかし、その日は路地の風景が少し違っていた。昨日は居酒屋が並んでいた場所が、今日は小さな神社と古い自動販売機に変わっていたのだ。
「おかしいな……昨日はここに居酒屋があったはずだよな。」
戸惑いながらも、その不思議さに魅了された洋介は、翌日もまたその路地を訪れることにした。
毎晩変わる路地
その後も洋介は毎晩路地を訪れたが、風景は日々変わり続けた。ある日は草木が生い茂る小道に、また別の日は荒れ果てた廃墟のような空間に――。
その変化は不気味でありながら、どこか惹きつけられるものがあった。
ある晩、路地の奥に小さな茶屋を見つけた洋介は、思い切って中に入ってみることにした。茶屋の中は驚くほど静かで、古い木のテーブルと椅子が並んでいる。店主らしき老婆が一人座っており、洋介を見て微笑んだ。
「ここに来るのは珍しいことだね。」
老婆はそう言って、温かいお茶を差し出した。洋介が「この路地について知っていることはありますか?」と尋ねると、老婆は静かに答えた。
「この路地はね、来る人によって姿を変えるんだよ。その人が一番見たいもの、必要としている風景をね。」
洋介はその言葉に戸惑った。
「でも、なんで僕に……?」
老婆は微笑んだまま、答えない。ただ、「長居はしないほうがいい」とだけ言い残し、茶屋は気づけば消えていた。
真実への気づき
その夜、ホテルに戻った洋介は、自分がこれまでに見た路地の風景を思い返した。それらはどれも、彼が幼い頃に見た記憶や、忘れかけていた風景に似ていることに気づいた。
神社の境内は祖父母の家の近くだった場所。廃墟のような建物は、かつて通っていた小学校の旧校舎。そして、最初に見た居酒屋は、父親と一緒に訪れた思い出の場所だった――。
「この路地は、僕の記憶を映しているのか?」
その考えに取り憑かれた洋介は、翌朝早くもう一度路地を訪れようとした。しかし、そこにはただ普通の住宅街が広がるだけで、あの路地の入口はどこにも見当たらなかった。
結末
2週間の出張を終えた洋介は、地元に帰ってもあの路地のことが頭から離れなかった。そして、いつかまたその場所を訪れる機会があるのではないかと感じている。
あの路地は一体何だったのか?もしまた出会えるなら、次は何を見せてくれるのだろうか――。
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