目次
【プロローグ】
フリーランスとして在宅で仕事をしている隆二は、毎朝の日課として近所を散歩していた。部屋にこもりきりの生活では気が滅入るため、気分転換とアイデア出しを兼ねたこの時間をとても大切にしていた。
その日は、いつもと違うルートを選んで歩くことにした。それが、彼にとって思いもよらない体験の始まりだった。
【不思議な家】
静かな住宅街を抜けて歩いていると、隆二は小さな古びた一軒家に目を引かれた。木製の外壁は年月を感じさせ、窓にはレースのカーテンがかかっているが、どこか温かみのある雰囲気を放っていた。
ふと、玄関ドアが少しだけ開いているのに気づいた。
「誰かいるのかな…?」
好奇心から覗き込むと、中には整然としたリビングルームが広がっていた。誰かが生活している形跡があるのに、不思議と物音ひとつ聞こえない。
【誘われるように】
隆二は自分でも驚くほど自然にその家に足を踏み入れていた。まるで誰かに「おいで」と手招きされたかのように。
中は外から見るよりも広く、ぴかぴかに磨かれた床、アンティーク調の家具、壁にかかった美しい絵画が目を引く。特に印象的だったのは、リビングの中央に置かれた机の上に置かれた古いノート。
表紙には、金の箔で「あなたの物語」と書かれていた。
【ノートの中身】
気になった隆二は、そのノートを開いてみた。そこには自分のこれまでの人生が細かく記されていた。
「学生時代の初恋、フリーランスとして独立した時の葛藤、昨日の散歩コースまで…」
そのあまりの正確さに背筋が凍る思いだった。そして次のページをめくると、そこにはまだ経験していない出来事が書かれていた。
「今日、散歩中に見つけた家に入る。そして…出られなくなる。」
【出口のない家】
慌ててノートを閉じた隆二は、家を出ようと玄関に向かった。しかし、ドアを開けようとしてもびくともしない。窓を開けようとしても、外は真っ白な霧に覆われていて何も見えない。
「なんだ、これ…!?」
動揺する隆二の耳元で、微かな声が囁いた。
「ここは、あなたが求めた場所です。」
振り返ると、リビングには先ほどまでなかった大きな鏡が立てかけられていた。その鏡に映っているのは、驚くべきことに「家に入る前の自分」だった。
【選択を迫られる】
鏡に映った自分は微笑みながら、こう語りかけてきた。
「ここでなら、もうストレスも心配もない。永遠に好きなことだけをしていられるよ。」
その言葉と同時に、家の中の景色が変わり始めた。壁一面に隆二が作りたかったデザイン作品が並び、机の上には彼の理想の仕事環境が整っている。
「この家で新しい人生を始めるか、それとも戻るか。選ぶのはあなた次第です。」
玄関のドアがゆっくりと開いた。しかし、その先は深い闇が広がっていた。
【現実への帰還】
隆二は迷った。ここにいれば、もう嫌な仕事も締め切りのプレッシャーもない。しかし、心のどこかで、この場所が現実ではないことを直感していた。
「俺は戻る…!」
決意を込めて玄関を飛び出した瞬間、真っ白な光に包まれた。
【日常に戻る】
気がつくと、隆二は自宅のデスクに座っていた。時計を見ると、まだ朝の散歩に出る前の時間だった。
「あの家は…夢だったのか?」
ふと机の上に目をやると、そこには「あなたの物語」と書かれたノートが置かれていた。ページを開くと、最後の一行にこう記されていた。
「あなたが戻ることを選んだのは正解です。けれど、この選択はいつでも変えられます。」
【エピローグ】
それ以来、隆二はあの家に行くことはなかった。しかし、散歩中にふと立ち止まると、どこからともなく甘い風の香りが漂うことがある。そのたびに彼は自分の選択が正しかったのかを考え、仕事へと向かうのだった。
あなたも、奇妙な扉を開ける時が来るかもしれません。その選択が正しいかどうか、答えを知るのはあなた自身だけです。
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