僕はゲームが好きだ。特にオンラインゲームは、自宅にいながら友人たちと冒険を共有できるから最高だと思っている。
だが、今はそのゲームにすら集中できない。数週間前に親友が亡くなったからだ。
彼は僕の幼なじみで、何でも話せる相手だった。でも、ゲームにはほとんど興味を示さなかった。僕がどれだけゲームの楽しさを語っても、「あー、俺には無理」なんて笑い飛ばす奴だった。
だから、彼を失ってもゲームは僕にとっての居場所であり続けると思っていた。けれど、ゲームをしていても彼のことを思い出してしまい、手が止まることが多くなった。
目次
奇妙な初心者
そんなある日、オンラインゲームにログインすると、見知らぬ初心者から話しかけられた。
「すみません、初めてなんですけど、一緒に遊んでもらえますか?」
正直に言えば、あまり気乗りしなかった。ゲームを教えるのは手間がかかるし、気分が乗らない日は特に面倒だ。だが、その時の僕は一人でいるのが耐えられず、「いいですよ」と答えてしまった。
その初心者の名前は「TARO」。ありふれた名前だが、どこか親しみを感じさせる響きだった。
不思議な感覚
TAROと一緒にプレイするようになって数日が経った。初心者特有のぎこちなさはあったものの、彼はすぐにゲームの基本を覚え、楽しそうに冒険をしていた。
彼との交流は不思議と心地よかった。
「なんか、昔から知ってる感じがするな……」
そんな気持ちが芽生えたのは、TAROが僕にふとこう言った時だ。
「お前、相変わらず強いな。昔からそんな感じだよな。」
何気ない一言だったが、心臓が止まるかと思った。
「昔から……?」
僕は恐る恐る聞き返したが、彼は「いや、なんとなくそう思っただけ」とはぐらかした。だが、その後もTAROの言葉の端々には、妙に僕のことを知っているようなニュアンスが混じっていた。
疑念が生まれる
TAROとのプレイを続けていくうちに、ある疑念が頭をよぎり始めた。
「もしかして……こいつ、あいつじゃないのか?」
そんな馬鹿げた話があるはずない。親友はもう亡くなっている。それは紛れもない事実だ。だが、TAROとの会話を重ねるたびに、彼の言葉や態度が、親友そのものに思えてならなかった。
例えば、ゲーム内の装備について話していた時のことだ。
「俺にはこんな派手なの似合わないだろ?」
親友も、服や持ち物はいつも地味なものを好んでいた。同じようなことを言っていた彼の声が、TAROの言葉に重なった。
確信へ
ある日のゲーム中、TAROが突然こう言った。
「なあ、お前、あんまり無理すんなよ。」
それは親友が生前、僕が忙しくしている時によく言っていた言葉だった。
「TARO……お前、もしかして……」
その言葉を打ち込もうとした瞬間、TAROが別の話題に切り替えた。まるで僕の疑問を避けるかのように。
その後も彼の正体を尋ねることはできなかった。けれど、心のどこかで、TAROが親友であることを確信していた。
最後の別れ
ある夜、TAROからメッセージが届いた。
「今まで一緒に遊んでくれてありがとう。もうそろそろ行かないといけない。」
僕は驚き、必死に引き留めようとした。
「どこに行くんだ? また一緒に遊ぼう!」
でも、TAROはただ「ありがとう」とだけ返してきた。そして、それを最後にTAROのアカウントはログアウトし、二度とログインすることはなかった。
思い出とともに
その日以来、TAROと連絡が取れることはなかった。けれど、彼と過ごした時間は今でも僕の心に残っている。
親友のことを忘れることはないだろう。だが、TAROとの交流は、彼との思い出をもう一度楽しく振り返るきっかけをくれた。
もしかするとTAROは本当に親友だったのかもしれない。だとしても、そうでなくても――あの不思議な時間は、僕にとってかけがえのない癒しとなった。
「またいつか、どこかで一緒に遊べたらいいな。
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