目次
プロローグ
40代の男性、裕也(ひろや)は、生粋のゲーム好きだ。子供の頃から新作が出るたびにワクワクし、最新のハードウェアだけでなく、レトロゲーム機の名作を掘り起こすことにも情熱を注いできた。
近所にある小さなゲームショップ「ゲームステーション」は、彼にとって宝の山のような場所だ。店内には最新ゲームも並ぶが、奥の棚には昭和や平成初期のレトロゲームがぎっしりと詰まっており、裕也はその中から掘り出し物を探すのが好きだった。
ある日、いつものように店を訪れた彼は、一風変わったゲームソフトと出会う。
謎のゲームソフト
その日、裕也は奥のレトロゲーム棚を物色していた。並ぶタイトルはどれも懐かしいものばかり――「ドット絵が素晴らしかったRPG」や「鬼畜難易度のアクションゲーム」など、すべてが彼の記憶に刻まれている。
しかし、ふと目に留まった一本のソフトだけは違った。それは、シンプルなデザインのパッケージに「星降る物語」とだけ書かれたタイトルだった。
「こんなゲーム、見たことないぞ……。」
裕也はゲームにはかなり詳しい。どんなマイナー作品でも、名前を聞けば大抵のことは思い出せる。しかし、この「星降る物語」については全く記憶がない。
「隠れた名作なのか、それとも発売されずに終わった幻のタイトルか?」
値札を見ると、価格はたったの500円。高くない。裕也は迷わず購入し、自宅のレトロゲーム機を引っ張り出して、ゲームを起動することにした。
驚きの映像と音楽
ソフトをセットして電源を入れると、テレビ画面にタイトル画面が浮かび上がった。タイトルには「星降る物語」と大きく表示され、その背後には夜空が広がり、無数の星がゆっくりと瞬いている。
だが、裕也はそこで目を疑った。
「この映像、数世代前のゲーム機のスペックで出せるクオリティじゃないぞ……!」
星々はただ輝くだけでなく、リアルな光の反射やゆらめきを見せており、現行の最新ゲーム機でもおかしくないほど美麗だった。そして、BGMとして流れる音楽もまた、不思議な魅力に満ちていた。ピアノと弦楽器が絡み合う神秘的な旋律で、聴いているだけで心が洗われるような感覚になる。
裕也は期待を胸にゲームを始めた。
不思議なゲーム内容
ゲームのジャンルはRPGだった。プレイヤーは星空を眺める一人の少年を操作し、冒険の旅に出るというシンプルなストーリー。しかし、その内容はどこか奇妙だった。
冒険の目的や明確な敵は存在せず、プレイヤーは自由に夜空を見上げたり、森や湖を散策したりできるだけだった。
だが、プレイを進めるうちに、裕也はこのゲームが単なる散策ゲームではないことに気づいた。
ゲーム内で星座を観察していると、画面に突然、文字が浮かび上がる。
「君が最初に見た星座を覚えているかい?」
裕也は驚いた。その瞬間、自分が幼い頃、父親と一緒に夜空を見上げた思い出が蘇った。父に教えてもらった「オリオン座」の記憶だ。それを選択すると、画面には父親と一緒に星を眺めている少年時代の裕也の姿が映し出された。
「なんだこれ……俺の記憶をゲームが知ってるみたいだ……。」
心に触れる旅
ゲームを進めるにつれ、裕也は次々と自分の過去の記憶と向き合うことになった。中学生時代、友人と初めてクリアした協力プレイの感動。就職したての頃、仕事が辛くて逃げ出した夜の帰り道。そして、母の最期に見た病室の窓からの星空――。
「このゲームは、俺の人生を見てるのか……?」
奇妙だが不思議と心が温かくなる感覚があった。それは、辛かった過去も楽しかった思い出も、全てが肯定されているような気持ちだった。
終わりのないエンディング
ゲームを進めていくと、少年が冒険の旅の終わりに近づく。最後に出てきた選択肢はシンプルだった。
「これまでの旅を忘れますか?」
裕也は迷わず「いいえ」を選んだ。すると、画面には再び夜空が映し出され、そこにはこう表示された。
「これからも、君の中の星を大切に。」
そして、ゲームは何事もなかったかのようにタイトル画面に戻った。
裕也は静かに電源を切り、しばらくゲーム機を見つめていた。あのゲームは一体何だったのか――。
次の日、再び「ゲームステーション」を訪れて「星降る物語」について尋ねたが、店主は「そんなソフト、うちには置いてないよ」と答えた。
結末
それ以来、裕也はあのゲームを二度と起動することはなかった。しかし、それ以降、どんなに忙しい日々でも星空を見上げる癖がついた。
そして、心が疲れたときには、いつでも自分の中に輝く星を探すようになった――。
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