目次
プロローグ
主人公の雄一(ゆういち)は60代の男性。ゲームが好きで、若い頃から趣味として続けてきた。特にレトロゲームには目がなく、暇さえあれば自宅のコレクションに手を伸ばし、古き良きドット絵の世界に没頭していた。
雄一には同じ趣味を持つ親友がいた。幼馴染で、共に年を重ねてきた良一(りょういち)だ。二人はいつもゲームについて語り合い、時には一緒に古いRPGをプレイしては、ゲームの中で「冒険の仲間」になっていた。
しかし、良一は数週間前に急逝した。突然の別れに、雄一は深い悲しみに包まれていた。
「もう一緒にゲームをすることはできないのか……。」
その思いを抱えながらも、雄一はいつも通り近所のレトロゲームショップへ足を運んだ。
謎のゲーム
ゲームショップの棚を眺めていると、一本の古びたRPGのカセットが目に留まった。タイトルは「星屑の冒険」。
「懐かしいな……これ、良一と昔話してたゲームじゃないか。」
そう思い出しながら手に取り、価格を見ると500円。安い中古品だ。迷わず購入して家に帰り、ファミコンを接続してゲームを始めた。
カセットは中古品だったため、セーブデータが残っているかもしれないと、ふと気になった。データを確認すると、やはり一つだけセーブが残っていた。それは物語の序盤、冒険が始まったばかりの状態だった。
「どれどれ……どんな名前をつけてるんだろう。」
軽い気持ちでセーブデータをロードすると、画面にはキャラクターたちの名前が表示された。その瞬間、雄一は言葉を失った。
親友の名前
主人公の名前は「リョウ」。そして、仲間キャラクターの一人には「ユウ」という名前がついていた。
「……まさか、これ……良一がやってたゲームなのか?」
震える手でゲームを進めると、主人公リョウと仲間たちが冒険を繰り広げていく。画面の中のリョウはまるで良一のように見え、雄一自身が「ユウ」としてその場にいるような感覚に陥った。
ゲームを進めるうちに、雄一の胸には懐かしさとともに深い悲しみがこみ上げてきた。
「これ、良一が一緒にやりたかった冒険なんだな……。」
二人の冒険
ゲーム内では、主人公リョウが「ユウ」とともに困難なダンジョンを切り抜け、魔物を倒し、少しずつ物語が進んでいく。セリフのやり取りも、まるで良一と自分の会話のように感じられた。
村のイベントでリョウが「一緒にいれば怖いものはないさ!」と言う場面では、雄一は思わず画面に向かって返事をした。
「そうだな、良一。俺もだよ……。」
その冒険の途中、セーブデータの進行具合から、良一がこのゲームを未クリアのまま残していたことが分かった。
「良一の代わりに、俺がエンディングまで行く。二人で最後まで冒険するんだ。」
その日から、雄一は少しずつゲームを進めるようになった。
クライマックス
ゲームの終盤、主人公リョウとその仲間たちは、闇の魔王との決戦に臨む。最後のダンジョンに到達したとき、ゲーム内のリョウが「ユウ」に向かってこう言った。
「ここまで来られたのは、お前がいたからだ。」
そのセリフに、雄一はとうとう堪えきれず涙を流した。画面の中でリョウが感謝を伝える姿は、まるで良一が自分に語りかけているようだった。
そして、最終戦闘を乗り越え、魔王を倒すと、エンディングが流れ始めた。
星空の下、リョウとユウが並んで立つシーンで、リョウが静かに言う。
「いつかまた、どこかで一緒に冒険しような。」
その言葉を聞いたとき、雄一は胸が熱くなった。
「良一、俺も同じ気持ちだよ……。」
結末
ゲームをクリアした後、雄一はカセットをそっと手に取った。
「これ、良一が俺に残してくれた最後の冒険だったんだな。」
それ以降、雄一はそのゲームを二度と起動することはなかった。ただ、そのカセットはずっとゲーム棚の一番目立つ場所に置かれている。
そして、夜空を見上げるたび、雄一は画面の中で一緒に星を眺めたリョウとユウの姿を思い浮かべる。
「ありがとう、良一。またどこかで冒険しような。」
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