目次
【プロローグ】
深夜残業を終え、会社員の弘樹はヘトヘトになりながらオフィスビルのエレベーターに乗り込んだ。ビル内は静まり返り、人の気配は全くない。
「もう日付も変わってるな…」
エレベーターのドアが閉まり、弘樹は1階のボタンを押した。普段ならこれでそのまま下に降りるだけのはずだったが、その日は何かが違った。
【奇妙な停止】
エレベーターが動き出して間もなく、突然ガクンと揺れ、停止した。
「えっ…故障?」
慌てて操作盤を見るが、何の警告灯も点いていない。不安を感じながらも、非常用の連絡ボタンを押してみたが応答はない。
「こんな夜中に止まるなんて…最悪だな。」
そう呟きながらため息をつくと、不意にエレベーターが再び動き始めた。しかし、向かう先は1階ではなく、「地下1階」だった。
【存在しないフロア】
弘樹の勤めるビルに「地下1階」など存在しない。ビルの設計図にもそんなフロアは記載されていなかったはずだ。
「何だよ、これ…」
戸惑う間に、エレベーターは地下1階に到着し、ドアが静かに開いた。
目の前に広がっていたのは、見覚えのない薄暗い廊下だった。壁はひび割れ、床には水たまりができている。不気味なほど静まり返り、奥にはかすかに明かりが灯っているのが見えた。
「どうする…?」
戻ろうと「閉」ボタンを押すが、反応しない。仕方なく一歩、廊下に足を踏み入れることにした。
【廊下の先】
廊下を進むと、古びた扉が一枚だけ立っていた。扉には何も書かれておらず、ノブを握ると驚くほど冷たかった。
恐る恐る扉を開けると、そこには小さな部屋があり、中にはデスクと椅子が一つずつ置かれていた。デスクの上には古びた電話があり、その受話器がわずかに揺れていた。
「何だこれ…?」
突然、電話が鳴り始めた。
【電話の声】
耳障りな音に耐えられず、弘樹は恐る恐る受話器を取った。すると、低い声がこう囁いた。
「まだ、下に行きますか?」
「えっ…何だって?」
問い返したが、返答はなく、受話器の向こうからはただ、かすかなノイズが聞こえるだけだった。
その時、背後で何かが動く音が聞こえた。振り返ると、廊下の奥に人影が見えた。
【迫り来る影】
その影はゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。暗がりの中で輪郭ははっきりせず、ただ異様に長い手足が見えた。
「誰だ!?」
叫ぶが、影は答えず、徐々に近づいてくる。恐怖に駆られた弘樹は、エレベーターに戻ろうと廊下を駆け抜けた。
エレベーターは開いたまま待っていたが、乗り込んで「閉」ボタンを何度押してもドアが閉まらない。その間にも影は近づいてくる。
【帰還】
「お願いだから動いてくれ!」
叫びながら必死にボタンを連打していると、突然エレベーターが動き出した。影はドアの手前まで迫っていたが、閉まる直前でエレベーターは上昇し始めた。
鼓動が激しく鳴る中、エレベーターは1階に到着。ドアが開くと、いつものロビーが目の前に広がっていた。
「なんだったんだ、あれ…?」
後ろを振り返ると、エレベーターの中には何もなかった。
【その後】
翌日、弘樹は同僚に昨夜の出来事を話そうとしたが、言葉に詰まってしまった。「地下1階」と影の話があまりに現実離れしていると感じたからだ。
その夜、エレベーターに乗るのがどうしても怖くなり、階段を使うことにした。だが、ふと階段の踊り場に目をやると、そこには「地下1階」と書かれた矢印の看板が立っていた。
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