一人暮らしを始めて3年。都会の雑踏から離れた静かなアパートは、少し古びているものの家賃が安く、住み心地は悪くなかった。
特に問題のない生活だったが、ある夜を境に、それは一変した。
目次
最初の違和感
その日は仕事が遅くなり、帰宅したのは深夜0時を過ぎていた。部屋に入ると、どこか空気が重い感じがしたが、疲れていた僕は気にせずシャワーを浴びてベッドに入った。
眠りにつこうとしたその時――
コン……コン……
何かが部屋のどこかで音を立てた。
「風かな?」
そう自分に言い聞かせて再び目を閉じる。だが、またしてもコン……コン……という音が響く。
部屋を見回したが、異常はなかった。
不気味な鏡
次の日も同じ時間帯に音が聞こえた。今度は音の発生源を突き止めようと音がする方向に向かうと、姿見の鏡の方からだと分かった。
「鏡……?」
恐る恐る鏡に近づき、注意深く覗き込んだが、自分の顔が映るだけだった。
その時、視線の端に何かが動いた気がした。
反射的に振り向いたが、背後には何もない。だが、確かに見えた――鏡の中で、何かが動いたのを。
深夜の訪問者
その夜、音はさらに大きくなった。
コン……コン……
眠れずにベッドで悶々としていると、ついに明らかな異変が起きた。鏡の表面が、まるで水面のように揺らぎ始めたのだ。
「何だこれ……」
目を疑ったが、鏡は次第に濃い霧に覆われ、鏡の中に誰かが立っているのが見えた。
それはぼんやりとした人影で、顔の詳細は見えない。だが、何かをじっとこちらに訴えかけているようだった。
言葉にならない声
耳を澄ますと、低いうなり声のような音が聞こえてきた。
「……返して……」
その声は確かにそう言っていた。
「返すって……何を?」
声に出して問いかけると、影は微かに動き、指を差した。その指先は、鏡台の引き出しを指していた。
引き出しの中身
恐怖に震えながら、引き出しを開けると、そこには古びたペンダントが入っていた。
見覚えのないそれを手に取った瞬間、鏡の中の影が鮮明になり、若い女性の顔が浮かび上がった。
「それ……私の……」
女性はそう言うと、微笑みながらゆっくりと消えていった。
その後
ペンダントは翌日、近所の神社に持っていき、供養してもらった。それ以降、鏡から音が聞こえることはなくなった。
だが、今でもあの時の出来事を思い出すと、背筋がゾクッとする。あの女性は一体何者だったのか――そして、あのペンダントがなぜ私の部屋にあったのか。
すべてが謎のままだが、少なくとも、もうあの音に悩まされることはない。
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